永井紗耶子(作家)

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10月×日 江戸時代を舞台にした作品を書いているときは、同じ時代を描いた物を読むと、ついつい影響を受けてしまうので大好きだけど、見ないようにしている。しかし今、少し江戸を離れているので、ここぞとばかりに江戸時代の作品を読もうと織守きょうや著「まぼろしの女-蛇目の佐吉捕り物帖」(文藝春秋 1980円)を手に取った。凄惨な女の死体の描写から始まり、ついつい読む手が止まらない。主人公である岡っ引き佐吉と、お洒落な町医者、秋高のコンビで謎解きをしていく。ミステリーやホラーの名手である織守氏が初めて挑戦する時代小説ということもあり、本格ミステリーとしても楽しめるし、江戸の風情もたっぷり。出て来る料理も美味しそうで、江戸の町に遊びに行けた。

10月×日 注文していた新刊、斎藤英喜著「陰陽道の神々 決定版」(法蔵館 1650円)が届いた。陰陽道の神々は、明治時代以降、振り返られることが少なくなった。しかしそれらは東アジアの文化の潮流の一端であり、今も尚、日本文化の根底にある。この分野における第一人者である斎藤氏の研究の深さと広がりが感じられる。今年の大河ドラマ「光る君へ」に関連して、斎藤氏もテレビで陰陽師について解説しておられた。この文庫のあとがきでは、病床にあると記されていたが、先日、訃報が届いた。更なる研究を拝読したかったので、残念でならない。御冥福をお祈りする。

10月×日 劇団☆新感線が2005年に上演した「吉原御免状」の映像が映画館で上映される。それに先駆けて、原作である隆慶一郎著「吉原御免状」(新潮社 880円)を再読。隆慶一郎の作品に初めて触れたのは30年近く前のこと。しかしその時点では既に亡くなられていたのだと改めて知った。独自の世界観で描かれた歴史上の吉原を舞台にした伝奇小説は、今、読んでも本当に面白い。小説家デビューしてからわずか5年で急逝。濃密な執筆に改めて驚かされた。

 楽しさを栄養にして、さて、そろそろ自分の原稿を書かないと……と、執筆にとりかかる。

【連載】週間読書日記

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