「はざまのわたし」深沢潮著

公開日: 更新日:

「はざまのわたし」深沢潮著

 在日コリアンの家庭に生まれた「私」が初めてキムチを食べさせられたのは、6歳くらいの頃だ。ふだんは夕食時にいない父が珍しくいて、「キムチを子どもたちに食べさせろ」と母に命じた。母はキムチをみそ汁で洗って辛さを薄め、ご飯茶碗の上にのせた。

 私は恐怖に震えながら、キムチを口に詰め込んだ。後に重い心臓病で亡くなった姉も泣きながら食べたが、すぐ吐いてしまい、父は母に「お前がちゃんと韓国人として育てないからだ」と怒って食卓をひっくり返した。16歳で単身、玄界灘を渡ってきた父は、子どもたちが韓国人として堂々と生きることを望んでいたのだ。(「第一話」)

 2つの文化の中で生きる葛藤をつづるエッセー。 (集英社 2310円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」