著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

古本や めねふね堂(谷中)元大学図書館司書の店主が集めてきた多種多様な本たちが10坪の空間に

公開日: 更新日:

 谷根千の愛称で人気のエリアだが、曇天のこの日は観光客が少なくてラッキー。住宅の合間に個性的な店が現れる「キッテ通り」に「古本や めねふね堂」が1年ほど前にできていた。

 ガラス戸を開けて入ると、谷川俊太郎のひらがな詩集「バウムクーヘン」や「別冊太陽 中原淳一」。詩とアートに強い店かなと思ったが、なんのなんの。10坪ほどの店内を左から回ると、池波正太郎、向田邦子、夢枕獏、池内紀らが並ぶ多種多様な棚から、日本語・本、科学、建築、アートの棚へ……と誘われ、守備範囲が広そうだ。「気になった本、面白そうな本を手当たり次第に買って、乱読の極みだったので(笑)」と、アロハシャツがお似合いの店主・関達朗さん(61)。

「手に取りやすい配列。並べ方に一工夫ありそう」と言わなかったら、「元大学職員で司書。二十何年、大学図書館勤務だった」と明かさなかったのでは。何せ、店のアピールがお嫌い。インスタでも「誰もフォローしない」という、ちょっと変わった人だから。

 ため込んできた自分の本を並べている。

「関さんの世界観を楽しんで」と棚が語りかける。「日本プロレス初の国際試合」という力道山が描かれたパンフレットがあるわ、「戦後、架けられていた」というロープウエーを材にとったノンフィクション本「渋谷上空のロープウェイ」があるわ。

店名はハワイの山や谷に住む伝説の小人族から

 わお!

 わお!の最高峰が、ハワイ関連の本がどっさりの棚だ。そもそも店名「めねふね」は、ハワイの山や谷に住んでいたとされる伝説の小人族の名から。「80~90年代からよく行ってまして」と関さん。黄色い布をまとった「めねふね」さんの木彫り人形がある。その前で、「日本からハワイへの最初の移民船が出たのが明治元年。移民の人たちは、サトウキビプランテーションで搾取されたというのが一般イメージですが、ハワイ島で漁業をやって裕福になった人たちもいます」「米国への忠誠心を示すため、志願兵になった2世が多いんですね」に始まる話に聞き入る楽しさよ。「図説 ハワイ日本人史」が最強の一冊のようだ。私は、その分野への興味の手始めに、岩波写真文庫の「日系アメリカ人-ハワイの-」を買った。

◆台東区谷中2-16-10/地下鉄千代田線千駄木駅1番出口から徒歩5分/正午~午後6時、月・火曜休み(祝日なら営業)

ウチらしい本

「ハワイイ紀行」池澤夏樹著(新潮社 1100円)(古本売値)

「池澤さんが『なぜハワイイがいいか』について書いた本です。ハワイじゃなくて『ハワイイ』。厳密に言うとハワイ語で『Hawai'i』と書いて『ハヴァイイ』ですね」

 その語源は「命、水、魂の宿る場所」。

 地理的位置を軸に、キラウエア火口をのぞき、タロ芋畑を見に行き、ポイを食べ、サーフィンやフラの由来を探るなど、著者ならではの視点と行動力が生きる。1985年刊。

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