著者のコラム一覧
世良康

広島県福山市出身。1948年生まれ。釣り歴40年余りの元日刊ゲンダイ記者。アユ、ヤマメ、磯釣りなどに親しむ。著書に「アユ・ファイター10年戦記」「釣りの名著50冊」「続・釣りの名著50冊」「首都圏日帰り地魚食堂38選」「文人・文士・食通が綴った絶品あゆ料理」(いずれも、つり人社刊)など。

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「フィッシュ・オン」開高健著

「地図をひろげる」

 冒頭のこの1行から、開高健の壮大な釣りの旅は始まる。地図で地形を見て、そこに魚を見つけ、そして夢を見るのが釣り人である。

 小説家はベトナム戦争の従軍取材で瀕死の帰還後、書斎に引きこもって名著「輝ける闇」にペンを走らせ、次に「私の釣魚大全」の取材で日本列島をアチコチ巡る。

 そして、何かが吹っ切れたように竿を手にして世界へ飛び出す。

 アラスカで84センチのキングサーモンを仕留め、スウェーデンでは淡水の暴君パイク、アイスランドではアトランティックサーモン、西ドイツではブラウントラウト、フランスではセーヌ川の雑魚に遊ばれ、ギリシャではツノザメ1匹でボウズを逃れる。そしてエジプトでは紅海のブルーマーリン釣りに意欲を示すが戦争で釣りの許可が下りず無駄足に……。

 釣りとともに語られる酒、料理、女などのうんちく譚もまた味わい深い。この面白さは、以後の「オーパ!」シリーズなどでますます磨きがかかる。

 (新潮文庫)

【連載】ベテラン釣り記者が厳選!いま読みたい釣りの名著ベスト7+1冊

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