「フィッシュ・オン」開高健著
「フィッシュ・オン」開高健著
「地図をひろげる」
冒頭のこの1行から、開高健の壮大な釣りの旅は始まる。地図で地形を見て、そこに魚を見つけ、そして夢を見るのが釣り人である。
小説家はベトナム戦争の従軍取材で瀕死の帰還後、書斎に引きこもって名著「輝ける闇」にペンを走らせ、次に「私の釣魚大全」の取材で日本列島をアチコチ巡る。
そして、何かが吹っ切れたように竿を手にして世界へ飛び出す。
アラスカで84センチのキングサーモンを仕留め、スウェーデンでは淡水の暴君パイク、アイスランドではアトランティックサーモン、西ドイツではブラウントラウト、フランスではセーヌ川の雑魚に遊ばれ、ギリシャではツノザメ1匹でボウズを逃れる。そしてエジプトでは紅海のブルーマーリン釣りに意欲を示すが戦争で釣りの許可が下りず無駄足に……。
釣りとともに語られる酒、料理、女などのうんちく譚もまた味わい深い。この面白さは、以後の「オーパ!」シリーズなどでますます磨きがかかる。
(新潮文庫)



















