「地上の楽園」月村了衛氏

公開日: 更新日:

 第2部では、仁学の計らいで北朝鮮に渡った勇太らの身に起こる、さらなる地獄が描かれていく。

「日本からの帰還者は激しい差別を受け、収容所ではさらに恐ろしい現実が待っていました。実は、これでも表現を抑えていて、あまりに悲惨な事実は描きませんでした。けれど、リアリティーをもって伝えたかったため、彼らの日常や文化的背景は丁寧に描写したつもりです」

 終章では、日韓W杯が開催された2002年まで時が進む。果たして、仁学と勇太はどんな人生を歩んだのか。

「歴史を学び、知ることから目を背けないで欲しい。本作が、そのきっかけになればと思います。政治やマスコミに踊らされ、自ら考えることを放棄したのでは、我々に未来はありません」

 現実の重みに押しつぶされそうになりつつ、ページをめくる手を止めさせない圧巻のエンタメ大作。今、読むべき作品だ。 (中央公論新社 2530円)

▽月村了衛(つきむら・りょうえ) 1963年生まれ。大阪府出身。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年「機龍警察」で小説家デビュー。13年「機龍警察 暗黒市場」で吉川英治文学新人賞、15年「コルトM1851残月」で大藪春彦賞、19年「欺す衆生」で山田風太郎賞受賞。「半暮刻」「普通の底」など著書多数。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰