いつかお世話になるかも!?弁護士が主役のリーガル小説特集
「リーガル・ピース!2」加藤実秋著
弁護士の仕事は、巨悪に立ち向かったり完全犯罪を覆したりすることだけではない。日常の中で起こる、ささいだけれどやっかいな争いを解決に導いてくれるのも彼らの役割だ。今回は、SNSの炎上から離婚まで、身近な揉め事に挑む弁護士たちの物語を集めてみた。
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「リーガル・ピース!2」加藤実秋著
本書の題材は裁判外紛争解決手続き。民事上のトラブルを裁判に持ち込むことなく解決する仕組みのことで弁護士らが和解あっせん人としてこれに当たるものだ。
「和解センターノーサイド」所長で弁護士の津原のもとに駆け込んできたのは、同センターのアルバイトである明日花の一家。母の茉子は美容系インフルエンサーとして活動しながらヘアサロンで働いていたが、同僚と共に独立を果たしたところだった。
しかし、元のヘアサロンオーナーがこれに激怒。SNSでふたりを非難したことで茉子のYouTubeチャンネルは炎上し、住所までさらされてしまう。加えて、オーナーは300万円の損害賠償も請求してくる。SNSへの誹謗中傷は名誉毀損などに当たる犯罪だ。一方で茉子たちは独立の際に顧客名簿を無断使用しており、誠実労働義務違反に該当しかねない。果たして津原はどう和解に持ち込むのか。
裁判シーンのない、新感覚のリーガルエンタメ作品だ。
(KADOKAWA 946円)
「離婚弁護士松岡紬」新川帆立著
「離婚弁護士松岡紬」新川帆立著
聡美はゴミ出し用のゴムサンダルのまま走り続けていた。腕の中では生後10カ月になる息子の翔が激しく泣いている。追いかけてくるのは、夫の亮介だ。捕まってしまう! そう思った矢先、聡美をかくまってくれたのが紬だった。
ここは北鎌倉にある縁切り寺として名高い「東衛寺」。そのほど近くにある蔵に、離婚事件を専門に扱う紬の松岡法律事務所があった。実は紬は東衛寺の住職だった玄太郎の娘で、現在は兄が縁切り寺を継いでいた。紬に助けられた聡美は、亮介と離婚したいと訴える。税理士で年収が高く上昇志向の強い夫は妊娠を機に豹変し、金を稼げなければ人権はないとばかりに聡美を奴隷扱いしていた。そうして心身ともに限界に達していた聡美が夫の不貞を知ったのが、つい昨日のことだった。ところが、話を聞いた紬はなぜか離婚に待ったをかけるのだった。
有利に離婚してすっぱりと縁を切る方法も分かる痛快リーガル小説。役立つときが来ないことを祈りたい。
(新潮社 781円)
「猫弁と奇跡の子」大山淳子著
「猫弁と奇跡の子」大山淳子著
シリーズ累計58万部を突破し、ドラマ化もされたリーガル小説。本書は第2シーズンの完結編である。主人公は、天才弁護士でありながら希代のお人よしで、猫を際限なく拾ってきてしまう百瀬太郎だ。
10代のころから百瀬に片思いをしてきた大福亜子と入籍を果たし、結婚生活にもどうにか慣れてきたときのこと。かつて百瀬が住んでいた、ひなた商店街の精肉店店主である鮎太から相談が持ち込まれる。あるとき、商店街で“ミステリーくじ”と銘打った福引所が開設されていた。しかし、誰が引いてもハズレばかり。そこで鮎太が引いてみると、何と1等賞。景品は自宅に届けるというので楽しみに待っていたところ、届いたのは何と「猫」だった。
鮎太は福引主を詐欺罪で訴えたいというが、詐欺とは財物の詐取を意味するため今の段階では詐欺に当たらない。困った百瀬は景品の猫を引き取ってくるのだが……。
ハートウオーミングな“猫弁”事件簿の結末やいかに。
(講談社 825円)
「魔女の原罪」五十嵐律人著
「魔女の原罪」五十嵐律人著
法律さえ犯さなければ何をしても許される鏡沢高校に通う17歳の和泉宏哉は、同じクラスの水瀬杏梨とともに人工透析を受けている。隣同士でベッドに横たわり治療を受けているあいだの話題は魔法使いや魔女だ。杏梨は「魔女は存在自体が悪」と主張していた。
ある日、校内で1年生の柴田達弥が窃盗事件を起こし、事件の背景に迫ろうとした宏哉は“無視”のターゲットにされる。杏梨に深入りすることを注意されていたのに、だ。その杏梨が行方不明の末、遺体で発見された。逮捕されたのは宏哉の母だった。
宏哉の一人称で進む第1部から一転、第2部では宏哉の担任教師で弁護士資格を持つ佐瀬の視点でも語られる。宏哉の母の弁護を引き受けた佐瀬は、鏡沢町の秘密、過去の事件との関連をひもといていく。やがて法廷が開かれ、佐瀬が見守るなか宏哉が証言台に立つ。
現役弁護士の著者が手掛けるリーガルミステリー。裁判の進行描写がリアルだ。
(文藝春秋 1045円)


















