「海辺の独裁者」松尾スズキ著│「不幸」を描いているのになぜかおかしい短編11編

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「海辺の独裁者」松尾スズキ著

 甲州街道で事故を起こして死んだ「わたし」は、幽霊となって1週間後に自宅に帰ってきた。30歳になったばかりの妻の道子は、きっと悲しみに暮れているに違いない。

 道子が喪服姿の若い男と一緒に帰宅した。「まあくん、伊丹十三の『お葬式』って映画知ってる?」と声をかけると、男は山崎努と高瀬春奈が喪服姿で絡み合うシーンがいやらしかったと言う。道子が潤んだ目で男を見つめると、男は「我慢できないんだ」と道子にキスした。ソファの上で抱き合う2人の足が「わたし」の骨壺を蹴り骨壺がテーブルから転げ落ちる音がしたが、2人は気づきもしない。(「それしか」)

「不幸」を描いているのになぜかおかしい短編11編。

(朝日新聞出版 2200円)

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