中村嘉子「女医の熱い部屋」昭和62年・光文社CR文庫から

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【あらすじ】産婦人科の美人女医の亜実先生は、毎日、同性のアソコを見つめるのが大事なお仕事。でも亜実先生は若いので、治療はいつも体当たり。おかげでレズられかけたり、調査のつもりが、患者のご主人に迫られたりして……。恋人の翔一は、不安にかられて、無我夢中で亜実を抱くのだった。美人官能作家のひとりである著者による書き下ろし長編官能ロマンの傑作。



「観念して、おまかせしますから。どうぞ……」

 若妻は、潔い。

 正直なところ、亜実のほうが、ドキドキしていた。

<まるでレズよね、これじゃ……。私がオタチで、彼女が、オネコ……妙な気分……>

 はじめてお産に立ち合ったときのような、なまアクビが喉にひっかかったような気分だ。

 だが、やるしかない。

 亜実は、バイブレーターを構えて、若妻の秘部にグッと近づいた。

 若妻のわれめが、またヒクッヒクッと喘いだ。まるで呼吸困難のハ虫類みたいに……。

「今、どんな気持ち?」

「……別に……」

「挿入(いれ)るわよ」

「はい……」

「挿入るわよ……」

「どうぞ……」

「あなたの秘口(ココ)に、こんなのが入るのよ」

「平気……です……」

 挿入ると言いながら、亜実は、なかなか挿入なかった。焦(じ)らせるだけ焦らしてみようと思っていた。性感は、多分にメンタルなものだから……。

「太いの、買ってきちゃったみたい。大丈夫かしら?」

「かまいませんから……」

「挿入るわ」

「はやく……」

 どういう気持ちでなのか、若妻が、「はやく」と呟いた。欲しくなってきたのか、それとも、ただ単に焦れったくなったのか――。

「欲しいの? これが」

「いえ、欲しくなんかありませんけど……けど……」

「さあ、挿入るわよ――」

「……」

 亜実は、バイブレーターのスイッチを入れた。

(中略)

 われめの秘肉とバイブが、わずか一センチほどまで近づいたとき、“異変”は起きた。

 秘口が、急に、ヒクヒクヒクッと激しく喘いだかと思うと、水のような液体が、そこから溢れ出てきたのだ。

「あっ……!」

「ああ……」

 二人は、同時に声を発してしまった。

(構成・小石川ワタル)

▽なかむら・よしこ 1954年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。シナリオ作家から小説家に。82年、「処女の爪」(双葉ロマン)を刊行後、人気作家になり、丸茂ジュン、岡江多紀とともに美人ポルノ作家ご三家と呼ばれた。2004年、49歳で没。

【連載】よみがえる昭和官能小説 エロスの世界

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