著者のコラム一覧
てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

落語しない落語家 笑福亭鶴瓶が語った“テレビ芸人”の矜恃

公開日: 更新日:

 何しろ、入門数日後にラジオ出演が決まったほどの“超エリート”。おそらく松鶴は、兄弟子からの嫉妬から守るため、あるいはテレビを主戦場にするなら、落語家という型にハマらないほうが良いと考えたため、落語を教えるのをやめたのだろう。結果、鶴瓶は落語をしない落語家になった。

 だが、鶴瓶は50歳になり古典落語に回帰した。きっかけは春風亭小朝に請われてのことだった。そこから鶴瓶は落語の難しさを知り、落語の魅力にのめり込まされた。失敗したこともあった。けれど、そこで助けてくれたのはバラエティーでの経験だった。

「バラエティーを何十年もやって、『鶴瓶噺』をやってきた中で、笑いに対するスタイルが出来上がっていったんですね。テレビでは何が飛んでくるかわからないフリートークや、時代の流れに対応せなあかん。ここでギャグを入れるとか、あるいは間を取るとか、そういうのが落語に生きるわけですよ」(KADOKAWA「毎日が発見」07年9月号)

 よく寄席などで落語のような芸にまい進している人こそ“ホンモノ”という意見がある。けれど、鶴瓶は何百万人、何千万人もの通りすがりの視聴者を振り向かせる工夫と瞬発力、その戦いをテレビで十数年続けてきた。何百人の愛好家たちの前でやる寄席とは根本的に違う。それは時代と一緒に生きるということだ。

 鶴瓶はその時代感覚を取り入れた自分流の落語をいまも生み出し続けている。その原動力はテレビ芸人のプライドである。

「僕をここまで走らせてきたのは、『なめんなよ』という気持ちですね」(中央公論新社「婦人公論」06年10月22日号)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも