著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

興収10億円超確実 ハリウッド“有名3人衆”が表現する1969年

公開日: 更新日:

 1969年にハリウッドで起きたシャロン・テート殺害事件をご存じだろうか。カルト集団が米女優を惨殺した事件で、先週公開された「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、その話を中心に据えている。興収10億円以上が見込まれるヒットとなったのは、監督がクエンティン・タランティーノ、主演がレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットだからだ。

 事件はラストのクライマックスで描かれるが、本作の魅力はまずもって69年の狂騒のハリウッドが活写されている点だ。映画関係では「卒業」や「いちご白書」など名作の主題歌が流れ、街には「ジョアンナ」や「キャンディ」など、当時話題の映画の看板が見える。何と「トラ・トラ・トラ!」の看板には旭日旗がたなびいている。

 スティーブ・マックイーンやブルース・リーも実名で登場するから驚く。この2人にテレビスター役のレオと彼のスタントマン役のブラピが絡む。その絡ませ方がまた、本作の愛らしいところだ。マックイーンの代表作も画面に映る。これ以上は本稿で明かすわけにはいかない。

 シャロン・テートも実名だ。ミニスカートにブーツ姿が何とも格好いい。彼女が出演した作品を映画館に見に行くシーンが素晴らしい。どう素晴らしいかは見てもらうしかないが、ここは監督がもっとも熱情を込めて撮ったシーンだと思える。彼女へのオマージュが存分に込められており、クライマックスへと見事につながっているのだ。

 当時のハリウッドを知らなくても存分に楽しめる。その狂騒は今の時代が失ったものであり、失ったものの大きさを、多くの人が本作からひしひしと感じとるに違いないからである。

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