著者のコラム一覧
板坂康弘作家

東京都出身。週刊誌ライターを経て、阿佐田哲也、小島武夫が結成した「麻雀新撰組」に加わり、1972年創刊「近代麻雀」の初代編集長。小説CLUB新人賞を受賞して作家デビュー、著書多数、競輪評論でも活躍。

<2>阿佐田少年は東京・市谷でB29の大空襲にあった

公開日: 更新日:

 率直に言うが、阿佐田哲也と麻雀を素材に、この連載コラムを引き受けたが、彼を書くことは時代も書くことになると感じている。話が麻雀を離れても、お許しいただきたい。

「麻雀放浪記」の書き出しは、東京の道路を掘れば“ドス黒い焼土”が現れるという描写から始まる。昭和20年の3月10日、4月13日、5月25日の3回、アメリカB29編隊の焼夷弾攻撃で、東京の街は灰燼に帰する。

 3月の大空襲は、とくに酷かった。当時、千葉市に住んでいた私は、海岸へ出て、空の半分が赤く燃えている様子を見ている。

 東京・市谷にいた阿佐田さんは、業火の中を逃げ惑ったはず。この日が、軍国主義で塗り固めた、当時の価値観を崩壊させた。

 学校は焼かれ、類焼を免れても、先生は兵役、登校する児童はパラパラ。学校だけではない。ヒエラルキーが消滅、人は自らの執念に縋って生きようとし、敗戦を迎える。

「麻雀放浪記」は荒くれた時代背景があって成立する世界なのだ。

 阿佐田さんが、旧制中学を卒業していないのは事実だが、戦時体制が崩れ、そのまま学校に通わなくなったのが、本当のところだと思う。

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