田中幾太郎
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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

“福島三羽ガラス”」最大のヒット曲は戦時歌謡「暁に祈る」

公開日: 更新日:

 努力むなしく、古関のデビュー曲はあまり売れなかった。やっとヒットに恵まれるのはそれから4年後。ドラマでもそのままの曲名で登場する「船頭可愛や」。1935年最大のヒットとなり、古関の名を不動のものとするが、作詞家も歌手も三羽ガラスの面々ではなかった。

■軍歌というより反戦歌

 実は、古関、野村、伊藤が揃い踏みしたレコードはそれほど多くない。最初に出したのは太平洋戦争が始まる前年。「暁に祈る」という戦時歌謡だ。同名の映画の主題歌で、陸軍省から依頼されてつくった曲である。さまざまな軍人が口を出し、方針が右往左往する中で、作詞を担当した野村は7回も書き直しを命じられた。

 そのわりに、できあがった曲は軍国調とは程遠いものだった。詞もメロディーも哀愁を帯びていて、抒情豊かな伊藤のバリトンとぴったり合い、大ヒットした。戦地でこの曲を聴いて望郷の念に駆られた軍人たちも多かったというから、戦時歌謡や軍歌というより、反戦歌に近かったのかもしれない。

 戦後も3人のコンビで「若き日のエレジー」や「岬の灯り」、伊藤が紅白歌合戦で歌った「メコンの舟唄」などを世に送り出しているが、「暁に祈る」を超えるヒットにはならなかった。

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