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吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<129>「いごん」は存在しなかったはずの社封筒でMに郵送された

公開日: 更新日:

 もし、それが本当であれば「『いごん』を平成25年2月28日に受け取った」というMの供述はウソであることが証明されることになる。真っ暗な闇の中に微かに光が見えてきたような気がした。

■初納入の半年以上前に受け取る?

「ああ、ありました」

 事務所から戻ってきた社長の手には伝票の束が握られていた。私も首を長くして応接間の机に置かれた伝票に目をやった。

「ええーと、アプリコからの注文は平成25年11月で、納品が12月3日になっていますね」

 伝票には2万枚という発注枚数も書かれていた。

「となると、『いごん』がドン・ファンから平成25年2月にこの封筒に入れられてMに送られてきたということはあり得ない、ということですね」

「ええ、そうなります」

 上手の手から水が漏る──私の頭にこの言葉が浮かんだ。遺言を受け取った者は封筒を開封せずに保管し、亡くなった後で裁判所に提出して関係者一同の前で開封するのが正式な手続きである。ただし、「ワケのわからない封筒だったので開けてしまった」というのがMの主張であり、それは認められることが多いことから、ご丁寧に遺言が入っていた封筒を裁判所に提出したのだ。しかし、それは当時、存在しないはずの封筒であった。

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