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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

映画「ホイットニー・ヒューストン」字幕監修から見えたオモテとウラの魅力

公開日: 更新日:

難題に見事応えたケイシー・レモンズ監督

 天才シンガーのキャリアの始まりから不幸な最期までを2時間半で。この難題に見事に応えたのは、俊英ケイシー・レモンズ監督。ホイットニーと同じアメリカ黒人女性だ。主人公がどんなに光り輝いていた時代の場面であっても、そこに不穏さを細かく描きこむことに監督は余念がない。

 ずっと秘匿してきた薬物常用や同性愛のパートナーの存在からも、けっして目を背けない。超高音のイメージが強いホイットニーの歌声には、じつは豊かな低音成分も含まれているように、この映画にはきらびやかさと共に不穏さがずっとある。黒人女性ホイットニーが戦いつづけてきた人種差別や家父長制への怒り。もちろん同胞、盟友としての監督からホイットニーへの共感でもあるだろう。

■サンタはいつも生き急ぐ

 40代以上の日本人にとって、ホイットニーはキラキラとしたイメージではないか。聴いていた自分の若さ、この国の好景気も重なり、ひたすら楽しい記憶となっているかもしれない。だが人が至上の楽しさを感じるとき、その裏側には「楽しさをつくる人」がいる。そちら側の人はどんな表情をしているか、知る瞬間はきまって遅れてやってくる。サンタはいつも生き急ぐ。必見の一本である。

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