著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

ジャニーズ性加害問題は組織犯罪。喜多川ひとりを悪魔化して属人的問題に帰することは、巨大な性犯罪の矮小化につながる

公開日: 更新日:

〈構造〉を変えないことには、エンタメにもこの国にも未来はない

 Nスペを観て痛感したのは、ジャニーズ性加害問題は組織犯罪であるということ。ジャニー喜多川ひとりを過剰に悪魔化して属人的問題に帰することは、巨大な性犯罪の矮小化につながる。子どもの人権問題に詳しいジャーナリスト今一生さんがつねづね指摘してきたように、この国の「子どもの被害に対する無関心」がこれほどの地獄を生みだしたのだ。

 モンスターは死んでもう消えたから今後は安穏な日々が続く、なんて誰にも言えないはずだ。罪を犯した個人を裁くのは当然だが、その悪辣なふるまいを許したり助長したりしたのは〈構造〉なのだ。それを変えないことには、エンタメにもこの国にも未来はない。

 最後に衆院選について少々。

 23日、「しんぶん赤旗」がまたスクープを打った。自民党は派閥裏金事件で非公認となった候補が代表を務める党支部に政党助成金2000万円を振り込んだ、と。報道を驚くほどあっさりと認めた森山裕幹事長は「候補者に支給したものではありません。党勢拡大のためです」と迅速な火消しに努めた。

 つまり〈非公認〉とは「公認はしないが、公認と同額のカネは配る」という意味だと〈公認〉したわけだ。あと「党議員の応援演説と公明党推薦がつく」もあるんだっけ。ないものといえば当然ながら「比例重複」か。あ、「石破首相の応援演説」もそうか。ううむ。ぼくは〈非公認〉という日本語を誤って使ってきたのかな。どうなってんのよ、自民党の国語事情は。

 首相ではなく党総裁としての石破茂さんに問いたい。貴兄が「真の保守とは」と説く先の現実はこれだったんですか。それとも、いまはガマンと砂を噛むような思いでこの時を過ごしているのでしょうか。

 イヤな現実を目の当たりにしたとき、目につきやすい特定の人物のせいにしたり、やたらとSNSのせいにしたりする人たちがいるが、ぼくはそんな思考は本質的ではないどころか、事態の矮小化にしかならないと考える。もう一度言おう。〈構造〉を変えないことには、政治にもこの国にも未来はない。

 日曜はどうか未来につながる投票を。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  2. 2

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ

  5. 5

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  1. 6

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  2. 7

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから 

  3. 8

    中井貴一の“困り芸”は匠の技だが…「続・続・最後から二番目の恋」ファンが唱える《微妙な違和感》の正体

  4. 9

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  5. 10

    永野芽郁&田中圭「終わりなき不倫騒動」で小栗旬社長の限界も露呈…自ら女性スキャンダルの過去

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  2. 2

    巨人「松井秀喜の後継者+左キラー」↔ソフトB「二軍の帝王」…電撃トレードで得したのはどっち?

  3. 3

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

  4. 4

    巨人のW懸案「ポスト岡本和真&坂本勇人」を一気に解決する2つの原石 ともにパワーは超メジャー級

  5. 5

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  1. 6

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  2. 7

    吉岡里帆&小芝風花の電撃移籍で様変わりした芸能プロ事情…若手女優を引きつける“お金”以外の魅力

  3. 8

    【今僕は倖せです】のジャケットに表れた沢田研二の「性格」と「気分」

  4. 9

    吉田拓郎の功績は「歌声」だけではない イノベーションの数々も別格なのだ

  5. 10

    裏金自民が「11議席増」の仰天予想!東京都議選告示まで1カ月、飛び交う“怪情報”の思惑