「何者か」じゃなく ロングコートダディ兎が「俺自身」でいたいと思えるようになったワケ
兎は、何組か組んでは別れを繰り返す中で、堂前と出会った。お互い、増田こうすけの漫画「ギャグマンガ日和」が好きだったことから意気投合。兎は周囲より自分が面白くないことが分かり心が折れて、地元・岡山に帰ろうと思っていたときに、堂前に誘われてコンビを結成した(吉本興業「月刊芸人」21年5月15日)。
しかし、09年のコンビ結成から4年目を迎える頃だ。オーディションバトルの結果が振るわなかったことと、先輩芸人が後輩100人ほどを集めて海に旅行へ行った際、まったく馴染めなかったことが重なって、兎は再び心が折れた(同前)。堂前に解散を持ちかけたのだ。
だが、兎は1カ月ほどで後悔した。お笑いが「むちゃくちゃやりたく」(同前)なったのだ。けれど、自分で言った手前、言い出しにくい。そんなとき背中を押したのはやはり周りの友人だった。「絶対に言うべきだ、言って断わられてもいいやん」と言われ、4カ月後、再結成を提案したのだ(同前)。
当時は「周りと自分を比べ過ぎてた」と兎は振り返る。「だからもう人と比べるのは辞めよう」と思い直した(「Woman type」=前出)。何より、堂前は誰よりも兎という人間を面白がってくれる。だから兎は「『何者かになりたい』とかじゃなくて、俺は『俺自身』でいたい」(同前)と思えるようになったに違いない。