「富裕国の平均寿命100歳はムリ」は本当か? 米国で論文報告
がん治療や心臓病の予防、再生医療など近年の医療技術は飛躍的に進歩している。膨大な医療論文や情報を読み込み、解析して医療関係者や患者に適切なアドバイスをする医療AIも実用化の一歩手前。20世紀に起きた「長寿革命」の勢いが続けば、人類は普通に生活していれば100歳、お金をかけてより注意すれば120歳まで生きるのは難しいことではないと考えられている。
これを受け、長寿生活を維持するために働きたくないのに働き、遊ぶことも我慢して節約・健康生活に甘んじている人が大勢いる。にもかかわらず、じつは富裕層がいる国では平均寿命が低下傾向にあり、100歳は無理という。なぜか?
米国ウィスコンシン大学の研究チームが発表した「コホート死亡率予測は寿命延長の鈍化を示している」は、長寿を信じている人にとって衝撃的だ。20世紀の高所得国で達成された平均寿命の延長ペースが大幅に鈍化し、1939(昭和14)年以降の世代の平均寿命が100歳に達することはない、という。今年8月、米国の総合科学学術雑誌に掲載された。
研究はこれまで発表された死亡率予測手法を適用。1939年から2000年の間に23の高所得国(米、英、日、仏、伊、加など)の出生コホートの平均寿命の推定からはじき出した。研究によると、死亡率予測手法によってばらつきがあるものの、平均寿命の延長ペースは1900年から1938年までと比べて37~52%の幅で減少したという。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。