米国有利のTPPで手術、薬剤費が値上がり 介護も狙われる

公開日: 更新日:

「その結果は推して知るべしです。医療や介護ビジネスは米国企業に奪われるでしょう。薬の価格や手術方法にも影響します。薬の特許は現在、一定の期間を経ると特許が切れ、ジェネリック製品として多くの人たちが安価な薬を利用できます。しかし、TPP導入後は特許が半永久的に続けられる危険性が取り沙汰されています。また、米国発の手術法に特許料を支払わないと日本で手術できなくなる可能性もあります」(本田医師)

 実は日本の医療はすでに、米国政府の管理下にある。遠因は1980年代の貿易黒字だ。当時、米国では自動車産業を中心に日本バッシングが過熱。それを収めるために行われた中曽根・レーガン会談で、医薬品・医療機器や電気通信など4分野は米国の意向を無視した貿易ができなくなった。その結果、日本の医療分野の輸入額2兆円に対し、輸出額は200億円前後という不平等状態が続いている。

「米国はこの間にも医薬品の関税撤廃、市場原理の導入などを日本に突き付けてきた。そして医療分野での不平等貿易の集大成となるのが、TPPなのです。日本側で喜ぶのは、米国と結託する一部の大企業と医療費抑制につながると考える財務省だけです」(本田医師)

 安保法制論議も重要だが、その裏で日本の医療の米国支配が進んでいるのを忘れてはならないのだ。

▽村吉健(むらよし・けん) 新聞記者からフリー。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を持つ。政治・経済・医療分野を得意とする。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する