著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

子宮がん検診の生涯リスクが100から14に激減との報告も

公開日: 更新日:

 子宮がん、特に子宮の入り口にできる子宮頚がんは日本の若年層で死亡率の増加がみられ、対策が最も重視されるがんのひとつです。対策のうち、大きな柱のひとつである子宮頚がんワクチンが、副作用の騒動で積極的な接種を勧めないとされ、止まっているのが現状です。

 世界的には、ワクチンによる副反応が疑われる重篤な症状は、ワクチンを接種しないグループと同等であることが示されており、日本だけがワクチンによる副作用だと大騒ぎしているのが現状です。この異常な事態が収束し、一刻も早いワクチン接種勧奨復活を望んでいます。

 そのワクチンとともに、もうひとつの大きな対策が子宮頚がん検診です。この検診の効果を検討したランダム化比較試験はインドで行われた研究一つしかありませんが、その研究では、「生涯ただ一回の子宮がん検診の受診により、子宮頚がんによる死亡が100から65にまで少なくなる」という、他のがん検診では示されていない大きな効果を報告しています。

 インドでの研究が日本に当てはまるかどうか分からないという指摘はあります。しかし、症例対照研究という検診群に有利な結果が出やすい方法での検討では、日本でも35歳以上の女性を対象として、「進行がんを100から14に減らした」という結果が報告されています。これほど大きな効果を研究上の問題点で説明することは困難で、日本人でも同様の効果があると考えるのが妥当なところではないでしょうか。

 子宮頚がん検診は、大腸がん検診と並んで多くの人にお勧めする検診のひとつです。

【連載】数字が語る医療の真実

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」