著者のコラム一覧
河野道宏東京医科大学脳神経外科 主任教授

東京医科大学病院脳神経外科主任教授。聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底髄膜腫手術のエキスパート。

聴神経腫瘍は“良性”脳腫瘍だが脳幹圧迫で命に関わることも

公開日: 更新日:

 いま、私は東京医科大学病院で、聴神経腫瘍の手術を年間約100件手掛けています。患者さんの3分の2はほかの病院からの紹介で、残りの3分の1はインターネットで調べていらっしゃった方です。

 聴神経腫瘍について、どんな病気か想像がつきにくい方が多いのではないでしょうか?

 聴神経腫瘍は、良性脳腫瘍のひとつ。平衡感覚を担う前庭神経から発生します。“良性”と言いますが、聴神経腫瘍が大きくなると脳幹を圧迫し、命に関わります。また、そこまでいかなくても、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)神経の圧迫が増すと、聴覚を失います。手術で腫瘍を取り除いても、すでに失われてしまった聴覚は元に戻りません。

 さらには、脳には運動や感覚をつかさどるさまざまな神経が集まっています。聴神経腫瘍ができる場所柄、手術での腫瘍摘出は非常に難しい。もし、治療の最中にほかの神経を傷つけてしまえば、顔面神経まひを起こすリスクがあるからです。

 患者さんの中には、「聴神経腫瘍です」と担当医に告げられ、病気の内容と治療法を調べれば調べるほど顔面神経まひなどの事例を目にし、恐怖に駆られながら必死になってインターネットで私の外来を知った方もいます。また、担当医から「大変な病気ですよ」「手術による後遺症も多いですよ」など辛辣なことを言われた方もいます。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  2. 2

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  5. 5

    オリックスまさかのドラフト戦略 「凶作」の高校生総ざらいで"急がば回れ"

  1. 6

    ヤクルト2位 モイセエフ・ニキータ 《生きていくために日本に来ました》父が明かす壮絶半生

  2. 7

    オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

  3. 8

    “代役”白石聖が窮地を救うか? 期待しかないNHK大河ドラマ『豊臣兄弟』に思わぬ落とし穴

  4. 9

    福山雅治は"フジ不適切会合参加"報道でも紅白で白組大トリの可能性も十分…出場を容認するNHKの思惑

  5. 10

    バスタオル一枚の星野監督は鬼の形相でダッシュ、そのまま俺は飛び蹴りを食らった