著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

桜の下で幸せそうに喜ぶ患者さんを見て思わされたこと

公開日: 更新日:

 桜が咲くと必ずAさん(当時34歳)という乳がんの患者さんを思い出します。

 随分前のことになりますが、私が勤めていた病院の裏庭に桜の木が2本並んでありました。当時は毎年この時季になると、化学療法科(腫瘍内科)病棟の桜の花見の日を2週間ほど前に決めていました。そして、1週間ほど前から患者さんに花見をする希望を聞いておきます。桜の木の下へ花を見に行くことを、ほとんどの患者さんが希望されました。

 日程が決まると、天気を心配し続けて当日を迎えます。その日だけは注射などの抗がん剤治療は午後に回しました。看護師は、この日はいっそう忙しく見え、いや、普段よりもっと生き生きと輝いているようでした。

 その日は幸い晴れて、暖かい陽に恵まれました。午前10時から準備を始め、その後、患者さんの移動です。病院の裏庭にある桜の木の下に敷くシート、椅子、点滴架台などの運搬から、看護師と医師がカンパして買った飲み物、お団子、お菓子を運ぶことから始まりました。

 点滴架台を引き連れて歩く患者さん、車椅子やストレッチャーで運ばれる患者さんなど、さまざまな格好で桜の木の下に集まります。シートに座った患者さんは40人ほど。裏庭の桜は、木の下から見上げても枝はわずかで、花も少ししかなかったのですが、皆さん喜んでくれたようでした。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋