著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

「ウチはボケない家系だから大丈夫」に科学的根拠はない

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 父親は90歳までボケずに死んだから大丈夫だ。母親は75歳でボケたから心配だ。そんなことを口にする人がいる。だが、極めてレアなケースを除いて、認知症発症が家族性によるものであるという医学的根拠はない。認知症には、大きく分けて「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の3タイプがある。その中で「アルツハイマー型」が約6割でもっとも多いのだが、このアルツハイマー型認知症の発症要因は、アミロイドβタンパクという物質が脳に蓄積され、脳の神経細胞の働きを阻害することによるものと考えられているが、これが家族性のものという根拠がないのだ。

 このアミロイドβタンパクはもともと脳内に存在する物質であり、それ自体が有害というわけではない。水溶性の物質で、通常、血液の中に溶け出す。ところが主に加齢で脳にたまりはじめ、塊のようになって蓄積されるようになる。それによって、神経細胞の正常な働きを阻害し、脳の萎縮を招くことになる。これがアルツハイマー型認知症発症のはじまりである。

 だからといって、このアミロイドβタンパクを体内から排除すればいいかといえば、ことはそう簡単ではない。排除する方法は見つかっていないし、排除することによる副作用の可能性も否定できない。残念なことに現段階では、この物質のメカニズムはいまのところ解明されておらず、正常な人体においては何らかの役割を担っているのではないかとも考えられている。だが、このアミロイドβタンパクが脳内に蓄積しはじめるとすぐに認知症を発症するかといえば、答えは「NO」である。蓄積から約20年程度を経過してから発症するとされている。現在40代、50代の世代ではすでにアミロイドβタンパクの脳内の蓄積がはじまっている可能性が高いともいえる。

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