著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

高齢者が高血圧や高血糖の薬を飲み続けるのは考えもの

公開日: 更新日:

「近ごろ、認知症のせいか、ボーッとして血圧の薬を飲むのも忘れてしまっている」

 高齢の親を持つ子どもさんから、こうした心配の声が聞かれる。

 最近は各自治体で後期高齢者検診が実施されているが、そこで「血圧」や「血糖値」「コレステロール」などがひっかかり、薬の服用を強く勧める医者が少なからずいるのだ。わずかに基準をオーバーした数値以外、とくに症状が認められない場合においても、である。すると多くの高齢者は「医者に言われたから」とまじめに薬を飲むようになるし、子どももまた親が薬の服用を忘れないようにと心がける。

 だが、ここには大きな落とし穴がある。「ボーッとしている」のは、認知症のせいではなく、その薬のせいかもしれないからだ。

 降圧剤については脳の障害、全身の倦怠感、頭痛、食欲不振の副作用があるし、血糖降下薬には便秘などの腸の不調をはじめ、とくに高齢者の場合、低血糖状態に陥らせることが多く、意識障害などにつながることが珍しくない。意識障害での異常言動が認知症によるものと診断されるケースも少なくない。コレステロール値についていえば、その低下が意欲低下を招くという説もある。また、ある調査によれば、悪玉コレステロールとされるLDLコレステロールの値が高いほど総死亡率が低下するという結果も明らかになっているし、別の調査ではコレステロール値を下げても心筋梗塞発症のリスクは下がらなかったという結果も出ている。

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