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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

三ツ矢雄二さんは前立腺がんで手術を選択 3つの指標で「治療せず」も

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 この事実が示しているのは、前立腺がんには命に影響しない穏やかなタイプが存在すること。もちろん、ほかのがんと同じように転移や再発して寿命を縮めるタイプもありますから、それらの見極めが重要ですが、前者なら手術は必要ありません。

 その見極めが、PSA10以下、病気がT2以下(がんが前立腺内にとどまる)、グリソンスコア6以下です。グリソンスコアとは12カ所を採取する生検と病理検査から導く数値で、最も多い病変と次に多い病変を判定して、その数値の合計で2~10に分類します。

 これらを満たせば、何も治療せず、定期的な検査でフォローするのが監視療法です。悪化が確認された時点で治療に切り替えます。

 フォローの材料は一般にPSAと生検ですが、私は生検の代わりにMRIを用います。生検は宿泊して合併症のリスクがありますが、MRIは日帰りで数分で済みますから。

 医学誌「ニューイングランド・ジャーナル」に報告された研究結果が興味深い。監視療法の条件を満たす限局性前立腺がんについて、監視療法、手術、放射線のグループに分けて中央値10年の時点で比較すると、前立腺がんの死亡率に差はありませんでした。

 高齢者は、体の負担が軽い治療がベターでしょう。その選択をするにはこの事実を知ること。監視療法という選択肢があるのを知ることです。それで治療が必要になれば、定位放射線治療が副作用も、コストの点でも手術に勝ります。

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