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永田宏前長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

新大陸の血液型は「天然痘」で決まった インド研究で明らかに

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 新大陸の原住民たちもO型が多い(70~100%)のですが、もともと新大陸にはマラリアはありませんでした。それが16世紀にスペイン人によって持ち込まれ、今日では多くの地域がマラリア汚染地帯になっています。

 しかしそのとき、同時に持ち込まれた天然痘のほうが、大きな影響を及ぼしました。数十年という短期間に原住民の9割が亡くなり、インカ帝国やアステカ帝国が滅亡したのです。

 天然痘と血液型の関係については、1965年から66年にかけて、インドの西ベンガル地方(ガンジス川デルタ地帯の西半分)で行われた調査研究が有名です。1965年の調査では、種痘を受けていない患者200人の血液サンプルが集められ、A型+AB型が、B型+O型と比べて4倍も天然痘にかかりやすいことが示されました。さらに66年の調査では、患者237人について重症化のリスクが調べられ、A型+AB型がB型+O型と比べて、なんと9.8倍も重症化しやすいことが示されたのです。

 新大陸の住民にO型が多いのは、天然痘の大流行の結果だと考えてよさそうです。もちろんO型でも、かかって死ぬ人は大勢いたはずです。しかし10人中9人が亡くなるという大惨事の中、感染リスクや死亡リスクがこれだけ違っていれば、A型やAB型の人が生き残るチャンスはかなり低かったことが容易に想像できます。また、B型は天然痘に対して生存確率が高かったのですが、一緒に入ってきたマラリアによって、その後は淘汰(とうた)を受け続けたはずです。結果的に、O型がもっとも生き残る可能性が大きく、そのまま今日に至っているということでしょう。

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