著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

「食べる+のみ込む」5つのステージにクスリが影響を及ぼす

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 われわれが普段当たり前に行っている“食べる”という行動は、先行期(認知期)、準備期、口腔期、咽頭期、食道期に分けられ、これを「摂食嚥下5期」と呼びます。

 先行期(認知期)は、食べ物を認識して口に運ぶ時期のことです。われわれは食べ物を見ると、「これはこんな味がして、こんな感じの食感で、こんなふうに食べればいいんだ」ということを、これまでの経験を基に無意識的に判断しています。当たり前のように聞こえますが、じつは高度な作業で、認知症の高齢者が食事を食べなくなる原因のひとつがここにあります。

 認知症の高齢者は、食べ物に対する記憶もなくなってしまっているケースがあります。すると、食べ物を見ても「見たことのない得体の知れないもの」と感じ、食べようとしなくなってしまうのです。健康な人でも、遠い異国の地で見たことも聞いたこともない食べ物に出合ったときは食べるかどうかをちゅうちょすることが多いでしょう。認知症の高齢者は毎食それが起きているのです。

 準備期は、食べ物を口の中に入れて「もぐもぐ(咀嚼)」し、舌の上に食塊という食べ物のお団子を作る時期のことです。ここはみなさんも実感できるところなので、ぜひ食事のときに意識してみてください。咀嚼していると徐々に舌の上に食べ物が集まってくるのがわかると思います。

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