著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

ダイエットしたければサイコロステーキより、どかんと塊ステーキ

公開日: 更新日:

 星の数ほど研究論文は存在し、今こうして私が解説している間にも、新しい研究が地球のどこかで行われています。

 とりわけ、ダイエットにまつわる論文や研究は、目を丸くするほど挙げられており、それだけ人間の普遍的なテーマであると言えるかもしれません。裏を返せば、研究論文が多いテーマであればあるほど、人間の欲望の深さに比例するとも言えるでしょう。

 冬の間にいろいろなものを食べ過ぎ、お腹回りが気になって薄着が恥ずかしい──。そんな方に向けて、本日は、さまざまなダイエットにまつわる論文を紹介しようと思います。

 例えば、シンプルなものでは、「お皿のサイズを変えるだけでカロリー摂取量が22%も低下する」というコーネル大学のウォンシンクらの研究(2013年)があります。 実験では、225人の被験者を対象に、お皿のサイズを変えることで食事の摂取量がどのように変わるかを調べたそうです。その結果、皿の直径を30センチから25センチに変えただけで、カロリー摂取量が平均で22%も低下。

 別の研究では、「小さいお皿と小さいスプーンで食べると約37%も食べる量が減った」というものもあるくらいですから、食事の際に食器を変えてみるだけで効果があると言えそうです。

 ちなみに、自然由来の食材の中に存在しない“青”を使った食器を使うと食欲が減退する──といわれていますが、10~20%ほどの青い皿はむしろ食欲を増進させるといった研究結果もあるほどです。言われてみれば、フグ刺しは青い陶器に盛られていることが多いですよね。青い食器を集めたところで、必ずしもダイエット効果が期待できるとは言えないでしょう。

 このように、食やダイエットにまつわる研究は、本当にたくさん存在します。「一人で食事をすると、複数人で食べたときよりも約3倍の量を食べてしまう」「暗いところで食べると食欲が減退する」といったものまであれば、果ては「きれいなモデルの写真を見ながら食べたほうが痩せやすい」といった、思わず「なぜそんな研究を」とつっこみたくなるものまであります。

 そうした中で、「大きなチャンクで食べると脳がだまされて満腹感を覚えやすい」という情報は興味深いでしょう。心理学者であるミラーが提唱した概念です。

 人間が情報を知覚する際の“情報のまとまり”をチャンクと呼びます。「かがみもち」を平仮名5文字として知覚すると5チャンクになります。そして、「鏡」と「餅」として理解すると2チャンク、「鏡餅」として理解すると1チャンクとカウントされます。

「大きなチャンクで食べると脳がだまされて満腹感を覚えやすい」というのは、この考え方を応用したもの。総量300グラムのサイコロステーキよりも、150グラムの塊ステーキの方が満足感を得やすいと錯覚する──。こう提唱しているのです。

 あれもこれもと欲張るよりも、大きな一つにこだわった方がいい。ダイエットをするとき、私たちはいろいろな方法を考えがちですが、「たった一つのことを貫く」。このワンチャンク作戦が有効かもしれませんよ。


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