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下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

誰かと話がしたくて…在宅医療を始めた75歳女性から涙声で電話がかかってきた

公開日: 更新日:

「もしもし……、一人だともう、どうにかなりそうなんです……」

 ある日、涙声で当院に電話がかかってきました。

「いかがなさいましたか?」(私)

「誰かとどうしてもお話がしたくて」(患者)

 電話の主は、最近私たちのところで在宅医療を開始した1人暮らし女性(75歳)。もともと統合失調症やうつ病を患っており、さらに乳がんの脳転移で放射線治療を受けた結果、脳の組織や細胞が死んでしまう「放射線性脳壊死」が疑われていました。脳の細胞内に一時的に水分がたまって脳全体が浮腫を起こし、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気、錯乱などが見られる、放射線治療の後遺症です。

「お熱など体調はいかがですか?」(私)

「体調は悪くないけど心が……。誰も来てくれなくて。どうにかなりませんか」(患者)

 放射線性脳壊死は、気分の落ち込み、イライラ、興奮、疲労感、幻覚や妄想が生じることもあります。気分の落ち込みが限界だったのか、当院の代表電話で助けを求められたようでした。

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