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池田陽子薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

【陳皮】胃の働きを活発にして消化吸収を促進する「胃の万能薬」

公開日: 更新日:

 食事するたび、みぞおちのあたりがジリジリ焼ける感じがする。胃がムカムカして、酸っぱいものがこみ上げることも……。そんなときは「胃酸過多」が原因かもしれません。

 胃酸過多とは、胃液に含まれる主成分である胃酸の分泌が過剰になった状態をいいます。胃酸は食べものが胃に入ったときや、味や香りを感じたときに、脳や胃が刺激を受けて分泌され、食べたものの消化に使われます。また、食べものとともに体内に入った菌を殺す働きもあるのです。

 ただし、非常に酸度が強力で、胃壁に直接触れるとダメージを与えてしまうため、胃酸の分泌時には胃粘液も分泌されて「胃粘膜」を覆い、保護する仕組みになっています。ところが、なんらかの原因で胃酸が過剰になり、粘液とのバランスが崩れると、胃粘膜が傷ついて不調を引き起こしてしまうのです。主に胸やけ、胃もたれ、胃痛、お腹の張りといった症状がみられます。原因としてはアルコールや刺激物の過剰摂取、食べ過ぎ、ストレスなどが挙げられます。

 また胃酸過多は、胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」を引き起こす可能性もあります。とくに、シニアは加齢によって食道と胃のつなぎ目にある筋肉が弱って緩みがちなので、胃酸が逆流しやすくリスクが高いといえます。重症化すると激しい痛みや、炎症の悪化から食道がんを引き起こす原因にもなるため注意が必要です。

 中医学において、胃は消化をつかさどる臓器「脾」と表裏一体の関係にあります。胃酸過多によるトラブルは、脾の消化能力の低下によって胃が虚弱になっていると考えます。また、ストレスにより人間のエネルギー源である「気の巡り」が悪くなることも、胃に影響を及ぼします。

 改善のためには、消化力を高め、胃の働きを高めるとともに、気の巡りをよくする食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは中華食材コーナーにある「陳皮」。ミカンの皮を乾燥させたもので、生薬としても使われています。胃の働きを活発にして消化吸収を促進します。胃の不調に優れた効果があり、胃痛、胃酸過多、胃もたれ、消化不良、吐き気、食欲不振、腹部膨満感などに威力を発揮するまさに「胃の万能薬」。日頃から胃の不調に悩まされている人にはぜひ、取り入れてもらいたい食材です。

 気を巡らせてストレスを改善する効果も高く、ストレスで胃が痛い、というときの強い味方でもあります。また、咳や痰を取り除くなど、喉のトラブル改善にも役立ちます。

 さわやかな香りとほんのりとした苦味がある陳皮は、クセがないので熱湯に入れてお茶として飲んだり、水で戻してサラダのトッピングにしたり、そのままスープや煮物、炒めものに入れて使えます。

 陳皮は自分で作ることもできます。無農薬・ノンワックスのミカンの皮を天日干しにして、しっかりと乾燥させればOK。シーズンに作り置きするのもおすすめです。

 陳皮の胃酸過多による不調を改善する効果を高めるには、同じく胃の消化能力を高めるナガイモ、大根、三つ葉、パクチーなどを組み合わせるとよいでしょう。

■陳皮高齢薬膳レシピ

陳皮とナガイモ入り鶏ぞうすい

 胃酸過多の不調によい、陳皮、ナガイモ、かいわれ大根を組み合わせたレシピ。ほっくり煮込んだナガイモのやさしい甘みに、陳皮とかいわれ大根が清々しいアクセントになった雑炊です。

【材料】2人分
●とりひき肉 100g●ナガイモ 5㎝
●長ねぎ 1/4本
●陳皮 小さじ2
●クコの実 大さじ1
●かいわれ大根 1/4パック
●ごはん 200g
●しょうが 少々
●酒、しょうゆ 大さじ1
●塩、こしょう 適量

【作り方】
 鍋にとりひき肉、酒を入れて箸でよく混ぜてから、弱火にかけてそぼろ状にする。水1.5カップを入れて煮立ったらアクをとってしょうゆを加え、1センチ角に切ったナガイモ、刻んだ長ねぎ、陳皮、すりおろしたしょうがを入れて5分煮る。ご飯を加えて温め、塩・こしょうで味を調えて器に盛り、かいわれ大根を散らす。

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