(3)高齢になって“もの”が二重に見える原因の大半は斜視
実際、前々回、紹介した「日本人における斜視の有病率の全国調査」(京都大学大学院医学研究科)でも、高齢者の斜視は増加していることが明らかになっています。特に75歳以上になると急増しています。さらに、海外の調査でも後天的な斜視は60歳以降に増加し、80歳以降はさらに増加するという研究もあります。
「斜視の有病率は4%程度で、かなり高くなっています。にもかかわらず、後天的な斜視はこれまで軽視されがちで、“年だから仕方ない”と諦めている人も多かったのです」(後関教授)
ちなみに、厚労省の調査「主な疾病の有病率」(2020年)によると、中高年に最もポピュラーな高血圧症の有病率は、11.92%、脂質異常症3.18%、2型糖尿病2.93%です。この数値から見ても斜視は国民病と言ってもいいほど、ありふれた病気と言えます。
また、斜視が軽視されてきた理由のひとつに、気づきにくいことが挙げられます。加齢性斜視の症状には、複視の他に、ものを見る時にぼやける、焦点が合わない、距離がつかみにくいなどがあり、老眼や他の目の病気と間違いやすいのです。