ジャーナリストの佐々木俊尚さん語る聴神経腫瘍と潰瘍性大腸炎との苦闘

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1日に20回トイレに行くことも

 そんなことがあって新聞社からIT系の出版社に転職をしたあと、2001年に「潰瘍性大腸炎」が見つかりました。手術はしないまま、この病気とは今も付き合っています。

 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる原因不明の難病です。簡単に言うと、腸で出血した血液がお尻から出てきてしまう病気。治療はステロイド剤を肛門から入れる集中投薬です。それを2~3カ月することで寛解するものの、やっかいなことに再燃を繰り返します。この25年の間に7~8回再燃しています。直近は24年でした。

 面倒なのは頻繁にトイレに行きたくなることです。1日に20回も行くことがあります。行っても血しか出ないのに……。なかなか厳しいですよ。

 指定難病の中では罹患者が多い病気ですが、当時は認知度が低く、字面から「胃潰瘍」に近い病気と誤解されて、「どうせ酒の飲み過ぎだろう」と軽口を言われて嫌な思いをしました。そもそも腸から出血って、カッコよくないので公言しませんでした。でも、社会の変化で「病気=社会人として不適格」というレッテルを貼られることがなくなり、亡くなった安倍晋三元総理がこの病気を公表したこともあって、一定の理解が得られるようになりました。その一点では安倍さんに感謝しています。

 寛解の間はまったく普通の生活ができ、食事制限もありません。ただ、酒を楽しみ、肉を食べていると「難病なのに」と言われてしまうことがあります。酒や肉は再燃の原因ではありません。再燃する原因はわかってないのです。なんの予兆もなく、ある日突然、「お尻の感じがヤバイな」と思ってトイレに行くと、血が混じっている……そんな感じから始まります。そうなると、腸に薬を入れるわけです。昔は浣腸のようなものでしたが、今はスプレー式になって少し気楽になりました。

 予防的な錠剤薬は寛解の間も飲み続けています。冷蔵保管の薬なので、旅行で持ち歩くのは面倒。でも、難病指定されている間は飲み続けるんでしょうね。

 07年ごろには、心膜嚢胞(心膜にできる水風船のような腫瘍)で手術をしましたし、10年は潰瘍性大腸炎関連の腸閉塞で2回、救急車で運ばれました。1回目はすぐに痛みがやみましたが、2回目は開腹手術でした。さらに20年と23年の2回、不整脈でカテーテルアブレーション(不整脈を起こしている箇所の表面を焼いて電気信号が流れるルートを変える)という手術も受けました。

 いろいろありましたが、一番つらかったのは、やはり耳が聞こえなくなったこと。手術前には聞こえていたのに、術後に聞こえないというのは精神的にインパクト大でした。

 何度も病気をして、いまだに難病と付き合っていることによって、健康に対して異様に気を使うようになったことはポジティブな効果です。例えば体重は70キロジャスト(身長171センチ)をキープしています。結婚から25年、家の食事は全部自分が作っていて、塩分少なめ、野菜中心の和食です。毎朝約2時間、有酸素運動と筋トレをして体を整え、月に2回は登山をしています。それでも潰瘍性大腸炎の再燃は起こるんですよ。

 新聞記者時代は昼夜逆転で2時間睡眠……という生活でしたから、病気はしていなかったもののめちゃくちゃ不健康でした。でも今は“不具合”に気付いたら、すかさず病院に行くことを心がけています。

 3年ほど前には、左目に違和感を感じて眼科に行くと、軽い白内障と言われました。「まだ手術の必要はない」とのことでしたが、自費で左目だけ人工レンズを入れて視力を上げたのです。すると、右目も引きずられて視力が上がりました。本当です。

 現在、東京、軽井沢、福井という3拠点生活を実践していますが、体力があるので移動が多くても問題ありません。寛解時は普通のサラリーマンよりずっと健康ですよ。

(聞き手=松永詠美子)

▽佐々木俊尚(ささき・としなお) 1961年、兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部中退後、88年から毎日新聞社で事件記者として激務の12年を過ごす。聴神経腫瘍を経て、月刊アスキー編集部デスクを務め、2003年に独立した。IT、政治、経済、生活や食など幅広いテーマで取材し、多数の著書を手掛け、コメンテーターとしてテレビやラジオでも活躍。著書に「仕事をするのにオフィスはいらない」「キュレーションの時代」などがある。

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