戦時の健康(4)日本では隠されてきた「心の病」…戦争のトラウマから逃れられない

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 沖縄戦を経験したある女性は、晩年に頻繁な中途覚醒を訴え、当初はうつ病と診断された。しかし、症状の特徴から遅発性の心的外傷後ストレス障害(PTSD)と判明した。別の女性は空襲体験後にパニック障害を発症し、震災報道を契機に記憶が蘇って食事もとれなくなった。戦争体験は時間を隔てて再燃するのである。

 第二は「喪失」だ。戦争は、家族、住居、仕事、社会的役割などの生活基盤を根こそぎ奪う。13歳で空襲を経験し家族を失った女性は、一時的に言葉を失い、戦後も自殺願望に苦しみ続けた。人は単に生き延びるだけでは健康とはいえず、つながりや役割の喪失は精神に深い亀裂を生む。

 さらに、「不確実性」も大きい。明日がどうなるのか分からず、終戦の見通しも立たない状況は慢性的な不安を生み出す。予測不能な状態そのものが強いストレスであり、戦時とはこの不確実性が常態化した世界なのだ。

■心理的負担が招く不調と感染症

 こうした心理的負荷が積み重なると、人はさまざまな形で影響を受ける。不眠、食欲不振、意欲の低下だけでなく、場合によっては抑うつ状態やアルコール依存、自傷行為へとつながることもある。

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