戦時の健康(4)日本では隠されてきた「心の病」…戦争のトラウマから逃れられない

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 戦時の健康を考えるうえで、見落とされがちなのが「心の健康」だ。

 戦争は薬の不足を招き、食料を欠乏させ、感染症を拡大させる。いずれも身体に直接的な影響を及ぼす問題だ。だが、精神への影響は、しばしば後回しにされる。

 第一次世界大戦以降、欧米では戦場のトラウマが「砲弾病」「戦争神経症」として問題視されてきた。日本でも戦時中は将兵の精神疾患を扱う専門病院で1万人以上が治療を受け、研究も進められていた。しかし「皇軍に戦争神経症はない」とされ、その存在は公に語られなかった。戦争下では心の不調は弱さや恥と見なされていたからだ。この風潮のもとでは、一般市民の戦争トラウマが表面化しにくいのも当然だった。

 しかし実際には、心の消耗は身体の衰弱と同じか、それ以上に深刻な結果をもたらす。戦時は見えにくい「心の病気」を増加させるのだ。

■複雑で多層的な戦時の精神的ストレス

 戦時の精神的負担は多層的だ。第一に「恐怖」がある。空襲や砲撃にさらされる環境では、人は常に死と隣り合わせに置かれる。サイレンや爆発音、炎に包まれる街の光景は強烈なストレスとなり、神経を摩耗させる。この体験は戦後も長く影を落とす。

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