【多け乃】値段表記なしの深~いワケ
東京・築地を拠点とする日刊ゲンダイが毎週末、地域密着型の粋な情報を紹介する「築地新聞」。今回は「魚がうまい!」で有名なこちら。
料亭じゃないですよ。でもね、「有名企業のお偉い方が『うまい魚』を目当てに黒塗りの高級車で乗り付ける店なんだ」って、何度か聞いたことがあります。おまけにメニューは値段表記なし。入りづらさを感じるじゃないですか……。
心配は無用でした。今年で創業75年を迎える「多け乃」さん。すりガラスの扉をガラガラと引き、一歩足を踏み入れると、そこは食いしん坊と飲んべえの楽園。通し営業なので、定食をガツンと食べるもよし、100枚は貼られているであろう短冊の中から選んだ一品料理をアテに酒を酌み交わすもよし! なんですから。
初代の祖父が店を始めた時は甘味屋だったそう。海軍経理学校の校舎が近くにあった時代で、学生が多く通ってきていたとか。その後、2代目が、魚河岸の移転を機に市場の労働者向けに定食や丼物を扱う食堂兼居酒屋へと形態を変え、現在のようなスタイルへ。かつ丼や天丼(各780円)、オムレツ(500円)といった一部メニューの値段表記は、食堂がメーンだった頃の名残だそうです。