「生きるも死ぬも恨みっこなし」橋田壽賀子さんに聞く<上>

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夫が残してくれた遺産は約2億8000万円

 半世紀以上、第一線で活躍してきた脚本家の橋田壽賀子さんは、92歳になった今もエネルギッシュに世界中を旅している。88歳で終活をスタートさせ、“安楽死宣言”もした。橋田流の人生の終い方が注目されているが、その考え方は至ってシンプル。地中海クルーズを直前に控えた3月下旬、都内で話を聞いた。

■遺産で悠々自適な暮らしをしたかったが…

〈登場人物は脚本家の分身みたいなもの〉――。日々実践する生き方を紹介した新著「恨みっこなしの老後」(新潮社)にはこうつづられている。

 1990年の第1シリーズ以降、30年近くにわたって放送されている「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)は5人姉妹を中心とした岡倉家のホームドラマだ。一体、誰がいちばん自分に似ているのかを聞くと、意外な答えが返ってきた。

「私は意地悪だって自覚がありますし、それが多少なりとも作品に出ているとは思いますけれど、あの中には近い人も、なりたい人もいないんですよ。ただ、どんなに嫌な子でも“最後にはいい道を選んでね”って願いを込めて書いています」

 5人娘の嫁ぎ先も含め、個性的なキャラクターが登場する大ヒットドラマには、前年の89年に亡くなったTBSプロデューサーで夫の岩崎嘉一氏の遺志が反映されている。

「主人は2億8000万円ほどの遺産を残してくれたんです。私はその遺産で悠々自適な暮らしをしたかったんですけれど、主人はその資金で私の名前を冠した財団を設立し、ドラマに恩返ししろと。でも、財団をつくるには2000万円ほどが不足していました。そうしたら(プロデューサーの石井)ふく子ちゃんが、“1年間続くドラマを書けばTBSが貸してくれるから書きなさい”って。簡単に言いますけれど、4クール分の脚本ともなれば、家族が多くないと持たない。そこで女の子5人に、定年間近のお父さんとお母さんの一家を描けばどうにかなるだろうって考えたんです。思いつきでしたが、5人もいると各世代が抱える悩みや不安が書ける。永久に書けるんですね」

 各回のテーマは新聞の読者投書欄を参考にしているそうで、「一般の人が何に悩んでいるのか、何がうれしかったのかが、つぶさに分かる」と言う。

 来年5月には平成から新たな年号へと変わる。大正14年生まれの橋田さんは4つ目の年号となるが「興味はない」と、こう続ける。

「だって、年号が変わっても私たちの生活が劇的に変わるものではないでしょう? ただ昭和という年号は忘れられませんね。なかでも、敗戦の昭和20年。それまで軍国少女だったのに、突如、はしごを外されて人生ががらりと変わってしまったんですから」

 NHK大河「いのち」(86年)や朝ドラ「おしん」(83~84年)にも、日本女子大在学中に体験した戦中・戦後の厳しい生活が色濃く反映されている。 
 =つづく

(取材・文=小川泰加)

▽はしだ・すがこ 1925年、京城(現・ソウル)生まれ。日本女子大卒業後、早稲田大に進学。在学中に松竹の入社試験に合格し、中退。脚本部に10年間勤めた後、52年からフリーの脚本家として活動。「おんな太閤記」「春日局」「いのち」「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」など多くのドラマを手がける。新著は「恨みっこなしの老後」(新潮社)。

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