<55>言語を取り戻すリハビリに「出会い系サイト」を活用
文字は読めないし書けない。だれかにストーリーを話して書いてもらう“聞き書き”も、しゃべれないのだから不可能だ。物書きとしては、死んだも同然になっていた。そんな時、オリジナルの“出会わない系のリハビリ”を思いつく。
やり方は簡単だ。出会い系サイトにアクセスし、自己紹介や女性への質問などを考えてメールを送る。すると写真付きの返信が来るので返事を書く。この繰り返しだ。これが言語を取り戻す訓練になった。
「出会い系って1回のメールに書ける文字数が決まっているんだよ。それも良かったんだろうな。だらだらと長く書けるようだと、短い文章の中で思っていることを伝えようとして工夫する必要がないから頭を使わなくていい。これじゃあリハビリにならないよ。
まあ向こうだって、一度にドバッと書けるような仕組みにしちゃうと商売にならないだろ? 少しずつ何度も繰り返し書かせることで小銭を落としてもらえるんだからな。必ず返信が来るのもよかった。向こうからすれば、どんなヤツが書いているのか分からないんだけど、とにかく送り返さないと途切れちゃうから必死だよ。おかげで好きなだけやりとりを続けることができた。あんなにタメになるサービスはないね」