緊急事態宣言から2週間 首都圏は「全滅」感染爆発が加速
1都3県に緊急事態宣言が発令されてから2週間の折り返し。菅首相は21日の衆院本会議で、新型コロナの感染状況について「全国で高い水準が続き、緊張感を持って対応する必要がある」と焦りをにじませた。人々の行動変容が感染者数に反映されるのは約2週間後。効果が表れるのはこれからとも言えるが、途中経過を検証してみると、不安になる。見逃せない中間データが判明した。
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宣言期間開始前(先行4都県は今月7日、7府県は13日まで)と、21日までの1週間平均の感染者数を比較したのが<別表>だ。宣言解除はステージ4(爆発的感染拡大)の指標を下回ることが目安とされる。感染者数のステージ4指標は、直近1週間で人口10万人当たり25人。実際の各都府県の人口に換算し、1日平均の感染者数として併記した。例えば、東京はステージ4脱却には、500人を下回る必要がある。
宣言発令前と直近の増減とステージ4指標
首都圏1都3県の中間結果は“全滅”だ。感染者数は発令前より減るどころか、大幅に増え、ステージ4の脱却指標からもかけ離れている。
昨年末には「Go To トラベル」が全面停止され、「静かな年末年始」が呼び掛けられた。実際、年末年始の人出は減った。その頃の行動が現在に反映されるはずなのに、首都圏の感染爆発は加速したのだ。
■3月以降 変異種流行も
他の地域もステージ4を脱したのは岐阜と愛知のみ。感染者数が目に見えて減ったのも、4割減の栃木と2割減の愛知くらいだ。他の5府県は横ばいか、微減で、今のところ目覚ましい効果は表れていない。
医療体制も厳しい状況だ。病床使用率のステージ4の指標は50%だが、20日時点で兵庫は79.5%と最も深刻。東京は4000床確保し、入院患者2839人で使用率は70%。空きがあるように見えても、自宅療養と入院等調整中が1万5000人を超え、実際はパンク状態である。
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)は言う。
「まだ2週間なのでもう少し様子を見る必要があります。対策を徹底して感染者を減少に転じさせる県も出てくると思います。ただ、昨年春よりはるかに深刻な状況なのに、前回の宣言よりもかなり緩い規制なので、なかなか効果が表れない面もある。さらに気がかりなのが、ウイルスの変異種です。現在の感染拡大はとくに低温などの環境によるもので、変異種が要因ではありません。英国では変異種の出現判明から、2カ月後に感染者が増えています。日本でも3月以降、感染力が最大1.7倍とされる変異種が主流になる恐れもあり、一段と感染者数が増えるかもしれません」
21日静岡の60代女性が英国型の変異種に感染していたことが新たに判明した。緊急事態宣言はズルズル長引きそうだ。
変異種に現行ワクチン効果なし!
「新型コロナ変異種には現行のワクチンが効かない」――海外の研究機関により、こんな衝撃的な報告が相次いでいる。
米ロックフェラー大が米ファイザー社と米モデルナ社のワクチンについて変異種への効果を検証した結果、南アフリカ型やブラジル型には従来型ウイルスに比べて効果が3分の1に、英国型には半分になったという。
一方、南アの国家感染症研究所は20日、「南ア型変異種は新型コロナ感染症の抗体から実質的または完全に逃れた」として、現行ワクチンの効果は限定的だと指摘した。
これでは新たな変異種が出るたびに新たなワクチンが必要となり、まるでイタチごっこだ。