都内に15店「麵屋武蔵」社長・矢都木二郎さんの巻<5>

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「江戸蕎麦 ほそ川」(東京・墨田区)

 そば屋さんの屋号には「手打ち」と銘打った店が少なくありません。そんな店は機械を使わず、店主が自らの手で打っているので「手打ち」に間違いはないのですが、こちらほどのクオリティーにないのも事実です。

 ご主人・細川貴志さんは四国、北海道、茨城のそばの産地を訪ね、玄そばをつぶさにチェック。良質な玄そばを仕入れて低温で保管し、毎日必要な分だけ製粉し、挽きたて、打ちたて、茹でたてのそばを提供しているのです。

 玄そばは、殻に包まれた状態のそばの実で、そば屋といえども、玄そばから仕入れる店はほとんどありません。それを磨いて、石抜きして、粒をそろえて、皮を外し、製粉するのです。とてつもない手間暇がかかります。

「そばは、そば粉で決まるから、製粉は自分でしたい」という細川さんの言葉はとても重い。そばへの情熱にあふれるからこそ、一連の作業を手抜きせず、挽きたて、打ちたて、茹でたてを追求されているのです。

 ミシュラン獲得も納得でしょう。そんなプロ意識をウチのスタッフも学んでほしくて、新店のオープン前は必ず新店長を店に連れていき細川イズムを感じてもらっています。

そばは細切り、目が詰まっていてコシがしっかり

 僕のイチオシは、穴子天せいろ(2700円)です。穴子は一本丸ごと弧を描いて揚げられています。フワッとした食感がたまりません。実はご主人、天ぷらの名店「近藤」さんのアドバイスを受けているのです。

 真打ちのそばは、細切りで目が詰まっていて、コシがしっかり。エッジの立ったそばは、強い風味を残しながら、口を通り抜けていきます。

 追加のせいろ(950円)をお願いすると、違う産地の一枚が運ばれてきます。産地の違いを楽しんでほしいというご主人のメッセージです。その思いを強く感じ、せいろは必ず2枚いただくのがいつものパターン。

江戸そばの真骨頂

 牡蠣そば(1980円)も見事です。写真の通り大ぶりの牡蠣が4個。それが器の表面を覆い尽くしていて、そばが見えません。牡蠣は北海道仙鳳趾産で、海のミルクのウマ味が出汁にもしっかり伝わっています。冬の温かいそばもいいし、夏のぶっかけも最高です。

 そばの素晴らしさは、シメのそば湯に表れています。そばが存分に溶け出していて、トロッとした液体はまるでくず湯のよう。つゆに注ぐとそばの香りが口いっぱいに広がります。格別のシメなのです。

 細川さんのそばをいただくと、いままでのそばはなんだったのか。そう思えてなりません。これが、江戸そばの真骨頂です。

 プロの味をぜひ!

(取材協力・キイストン)

■「江戸蕎麦 ほそ川」
東京都墨田区亀沢1―6―5
℡03・3626・1125

■麺屋武蔵
1996年創業。現在は青山や新宿、池袋など都内に15店舗を展開。企業とコラボするほか、小学校へのラーメン給食の提供や調理専門学校での出前授業など、新しい試みにも積極的に取り組んでいる。

▽やとぎ・じろう 1976年、埼玉県生まれ。城西大卒業後、一般企業に就職するが、大学時代にハマったつけ麺を日本全国に広めたいとの思いから、24歳で麺屋武蔵に転職。3年後、上野店店長に。2013年、先代からバトンを継ぎ、2代目社長に就任。 

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