三ノ輪で80年続くパン屋の3代目店主がたどり着いた真骨頂

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 最後の都電、荒川線。さくらトラムとかいう愛称がつき、車両も新しくなったが、路面をのんびり走る姿には癒やされる。早稲田―三ノ輪橋間の全長12・2キロ。東の終点・三ノ輪橋駅を降りるとすぐあるのが、三の輪銀座商店街だ。

 前身団体の設立は昭和21年。昭和53年にアーケードが設置され、「ジョイフル三の輪」という愛称がついた。名前は今風だが、歩いてみれば昔懐かしい昭和の商店街。八百屋に総菜屋、揚げ物屋。どれもうまそうで、そして安い。ボリューム満点のチキン竜田が1パック162円。近くに住んでたら絶対料理しないな。

 甲州屋、大津屋など古めいた屋号も多く、建物もずいぶんと古いが、ほとんどがシャッターを閉じた仕舞屋。新陳代謝が進んでいないのだろうか。お世辞にも活気があるとは言えない。

 そんな中、客足の絶えないパン屋を発見。屋号は「パンのオオムラ」。看板もレトロだが、白熱灯に照らされたショーケースの中身もソソる。ハムカツ、やきそば、コロッケ……いわゆる調理パンが、アルミトレーに整然と並ぶ。クリームパンやあんドーナツなどの菓子パンもうまそうだ。はやりのブーランジェリーのようなオシャレさは一切ないが、それがむしろオヤジ心を引き付ける。

「創業は昭和15年ごろ。祖父が裏の小学校の門前に店を構えました。こっちに来たのは戦後です」というのは3代目の大村利和さん(58)。子供のころから調理場で祖父と父の背中を見ているうちに、「いつしか継いでいた」という。

 クロワッサンなどのオシャレなパンも以前は随分と作ったそうだが、「出ないんでやめちゃいましたよ。土地柄もそうですし、お客さんも良い時の3分の1になっちゃいましたからね」。

 地元生まれだという妙齢のアルバイト女性は昔を懐かしみこう言う。

「私が小さい時、この通りは新開地といって、映画館もオモチャ屋もあった。毎日お酉さまかってくらい賑わって、道の反対に渡るのも大変なほど」

 東京の古い商店街で必ず聞く「歩けないほど賑わっていた」という昔話。でも、このひなびた感じがいいんだよな~。そう、よそ者は無責任なのだ。

 お礼もかねて買ったハムカツパン(140円)は、衣サックリ、パンの生地も軽く、胃にもたれない。そういや揚げ油にもこだわってるって言ってたな。オシャレじゃない。だけど毎日食べたくなる。それが商店街のパン屋の真骨頂なのだろう。

 (しばたゆう)  

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