石塚集
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石塚集

医学系編集プロダクション経営。医学ライター。東洋美術学校・ユーザーエクスペリエンス(UX)担当講師。テクノロジー系勉強会・湯川塾事務局。「AI新聞」副編集長。新宿・歌舞伎町でバーテンダーもしている。

アートと暮らしたくて美術品ショップを経営

公開日: 更新日:

稲垣ナオミさん(仮名・37歳)本業=和服メーカー

 本日、紹介したいのは元学芸員で、現在は副業で自分の好きな作家さんの作品を販売している稲垣ナオミさん(仮名)だ。まず稲垣さんのキャリアから聞いた。

「私は東京都葛飾区の出身で、都内のデザイン系の高校を卒業後、パッケージデザインの会社に就職し、その後、公園の遊具の設計の仕事をしました。しかし経済性ばかりが重要視されてしまう状況の中、本来の良いものを作るはずのデザインという行為と違和感があったんです。そして美術館の学芸アシスタントの仕事に就き、芸術作品の可能性、人の持つ創造性について考え直す時期を経ました。美術館ではさまざまな作家の人たちや作品と触れ合うことができて、文化や芸術の軸で生きるようになっていきました。いまは日本の伝統文化を伝承したいという思いもあり、和服メーカーにいます」

 稲垣さんが、自分で美術品を所有するようになったきっかけを聞いた。

「高校の同級生でいまでも絵を描き続けている友人がいます。ある時、その友人が絵をプレゼントしてくれたんです。絵を家に置いてみると、今度はその絵に合うような空間をつくりたくなってくる。他の美術品と合わせたり、違う作品で空間を構成したり。そういう楽しみを自宅の古民家でやるようになったんです。さらに美術館で仕事をしていた頃にも、たくさんの作家さんたちとの出会いがあり、作品への向き合い方、生き方、感じ方に影響を受けたので、アートの楽しさをもっと多くの人に知ってほしいと思うようになりました」

利益などはあまり考えていないものの…

 稲垣さんが取り扱う作品を販売するお店「暮 KURE」は4月にオープンしたばかり。JR日暮里駅から徒歩10分。谷中霊園を抜け、「上野桜木あたり」という複合商業施設の一角にある「カタテマ」の中にそれはある。1つの空間に4つの店舗が交じり合うシェアショップだ。「KURE」を訪れた時、稲垣さんがセレクトした作品が並んでいた。土の新たな表情を求めて、独自の新しい技法を追求している前沢幸恵さんの陶芸作品。木材を加工する素地作りと表面の塗装を一貫して行い、独自の作風を生み出す十時啓悦さんの漆作品。街に生きている人たちのあふれる生命力を描くBENさんの絵画。これからもっと評価される人たちだ。稲垣さんは、必ず作家の個展やアトリエを訪れ、考え方や方向性に納得がいってから関係を持つようにしているそうだ。稲垣さん自身も、扱う作家の作品を所有することが多い。

「日常の中にどうしたらアートを取り入れてもらえるのか日々探っています。私は作家の手作りの器で食事をすることも多いんです。壊れないように気を使いますが、食べるという行為自体に変化が起きます。器に合う食材を選んだり、食事が済んだらすぐに手入れをしたりと、一つ一つの行為をしっかりするようになり自分自身にも変化が起きます。そしてまた気づいたポイントを、KUREを訪れてくださるお客さまにお伝えできる。そのときの会話はとても楽しいですね」

 最後に収入を聞いた。

「作品と暮らすために生きているようなところがあるので、正直なところ利益などはあまり考えていないのですが、30万円程度の作品が売れた時には余裕ができる感じです」

 コロナの影響で在宅ワークが増えた、自宅の部屋や食器をちょっと引いた視点で見てはいかがだろうか。そこには暮らしとアートが関連するような副業のネタが転がっているかもしれない。

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