コロナ禍でアメニティー販売⇒マスク製造に…大逆転の軌跡

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 コロナ禍で多くの飲食業界と観光業が今も苦境に立たされている。ホテルアメニティーグッズの製造・企画・販売を手掛ける山陽物産(愛媛県伊予郡)もそんな企業のひとつ。昨年まではホテル向けの歯ブラシは年間売り上げ約8000万本、全国シェア17%を誇る元気な地方企業だったが状況が一変した。東京五輪の需要を見越し、昨年3月に工場を新築。大幅な増産態勢に入った直後にコロナ禍に見舞われた。

「2300坪の敷地に延べ床面積1200坪の工場を造り、機械も新しいものを入れて総額7億円の設備投資をしました。年間売り上げが30億円の会社ですからかなりの投資金額です。しかし、国のGoToトラベルキャンペーンが本格化する昨年10月まで新工場はほとんど寝かしたままでした」

 こう語るのは同社社長の武内英治氏(54)だ。その間、新型コロナ感染対策用品の防護服の製造販売も試みたがほとんど商売にはならず。地元では「山陽物産の新工場が売りに出された」と根も葉もない噂が飛び交ったり、新工場への取材依頼も数件あったという。

「恐らくマスコミは“コロナ禍で弱っている企業”の映像が欲しかったのでしょうね。ピカピカの工場を稼働させないままにしているウチみたいな会社が絵柄的にちょうどよかったのかもしれません」と、武内氏は自虐的に笑う。

7億円に加えて6500万円の追加投資を決断

 しかし、コロナ禍での“悪あがき”は決してムダではなかった。新たに計6500万円の設備投資を決断し、新工場の片隅に3台の機械を入れて3層不織布マスクの生産に挑戦した。もちろん、マスク製造は同社にとって初めてのことだった。

「でもね、ホテルアメニティーグッズもマスクも機械の操作方法は似た部分が多いんです。チェーンやモーターといった部品の修理の仕方もほぼ同じ。ニュースでマスク不足が報じられた瞬間に“自分たちでいけるんじゃないか”という思いがよぎりました。あとはやるかやらないか。経営者として決断するだけでした」(武内氏)

 結果的にこの経営判断はドンピシャだった。

 本格的にマスクの生産を始めたのは昨年11月から。やや出遅れたように見えるが、地元のスーパーやホームセンター、楽天市場などに一から販路を築き、今も1箱50枚入りのマスクが月間15万箱近く売れているという。年間では2億円近くの売り上げになる見通しだ。

「恐らくコロナ禍が収束し、マスクの売り上げが減る頃にはホテルアメニティーが回復基調に戻るはずです。これまでも4人の幼い子供を抱えながら、病気で入院した父母妻を3人同時に世話するといったプライベートでの苦労はありました。それに比べると今回は比較できないほどの災禍ですが、腹をくくって遮二無二に頑張ればなんとかなることもあるということです。コロナ禍で打撃を受けている皆さんには、ぜひ諦めずに頑張っていただきたい」

 伊予弁の優しい口調ながら、力強く語る武内社長だった。

(取材・文=岩瀬耕太郎/日刊ゲンダイ)

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