夏樹久視
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夏樹久視作家

1947年東京生まれ。週刊誌アンカー、紀行作家、料理評論家などを経て推理作家に。別名で執筆の多くの作品が話題を呼びTVドラマ化。母親の認知症を機に、65歳でヘルパー2級の資格を取得、約5年間、デイサービスでの就業を経験する。紀行文、料理本、ミステリーなど著書多数。日本推理作家協会員。

少年が急に飛び出してきた! 時給950円で人生暗転の危機に

公開日: 更新日:

 デイサービスに勤めていて、注意しなければならないのは意地の悪い先輩、ベテランヘルパー、店長、本社の担当部長などさまざまだが、なんといっても恐ろしいのは交通事故だ。5、6年前の話だが、デイサービスの車の事故が、タクシーの事故を超えたとか。ドライバーが定年過ぎの高齢者の多いことが大きな理由だろうが、怖くなる数字だ。  

 僕は28歳で運転免許を取得してから45年になる。羽振りがよかった40代のころ、愛車のBMWで小さな事故は2件ほど起こしたが、人身事故はゼロ。ここ20年ほどは、ゴールド免許を維持している。

 クルマの運転では、コンマ1秒が、生死の境目となることがある。

 3年ほど前、お年寄りを5、6人乗せて、ワンボックスカーでドライブに出かけた帰りのことだった。狭い道を走っていると、路地の角から赤い服を着た少年が、飛び出そうとしているのが見えた。とっさにブレーキを踏もうとすると、少年もこちらの存在に気づいて、足を止めた。しかし次の瞬間、今度はブルーの服の少年が角から飛び出してきたのだ。今度は、ブレーキに力を込める。間に合ったか! 少年は、車の左前方に1回転して、丸くなっている。「もしも」のことがあれば、僕の人生もこれで終わり、短い余生は交通刑務所暮らし……。悪夢が、一瞬、頭をよぎった。

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