小学生の子どもに東京五輪の「負のレガシー」をどう伝えるべきか?

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 多くの反対をよそに東京五輪が開幕した。「アホな国民は金メダルを取ればすべて忘れる」というのは権力者側の紛れもない本音だが、まだ純粋な心を持っている小学生には理解が難しいだろう。社会の仕組みを彼らにどう伝えるか、これをチャンスと捉え、夏休み中に親子で話し合ってみたい。

■大人はウソをつく、そして他人のせいにする

「平和の祭典」のはずなのに街にはテロ対策の警察官がズラリ。スポーツの感動を伝える選手たちも実は商業主義まみれ――。日本の“大人”たちはいまだ今大会の開催意義を見つけられないでいるが、政治家だけは「子どもたちに夢を」と答えがすんなり。菅首相が「57年前の感動を子どもたちに見てほしい」と言うのが代表例だ。

 感動、未来への希望はとても結構なことだが、ただ開催のダシに使われてしまった子どもたちにはいい迷惑だろう。

 5年前、学研教育総合研究所が小学生の男女に「東京オリンピックに興味があるか」と聞いたところ、「とても興味がある」はわずか16.8%。「まあ興味がある」の38.4%を含めても全体の半分ほどしか関心を寄せなかった。これに危機感を抱いたのか、その年に東京都教育委員会が学校の授業でオリンピック教育を始めている。「その後の人生の糧となるような掛け替えのないレガシーを子供たち一人一人の心と体に残していく」というのが目的で、具体的には「ボランティアマインド」「障害者理解」「スポーツ志向」「日本人としての自覚と誇り」「豊かな国際感覚」を教えている。

 むしろボランティアに頼る不可解なお金の流れ、大会関係者に続出する差別意識、誰も責任を取らない日本人気質を教えた方が良かったかもしれないが、膨れ上がった開催経費ひとつとってみても誰も責任を取らない。

 猪瀬直樹都知事(当時)は招致当時、開催経費を「総額7340億円」とし、「45億ドルを銀行にキャッシュで預けてある」と豪語していた。ところが、開催経費は昨年末時点で1兆6440億円に倍増。さらに会計検査院はこのほかに国が1兆6000億円を支出しているとし、合わせれば軽く3兆円を超えてしまうのだ。それなのに、猪瀬元知事は「東京五輪の運営がはなから無責任体制になっていたわけではありません。招致活動のときには、チームニッポンは機能していました」(2021年5月30日、本人ブログ)と他人事のように分析している。2030年までの観光需要などで12兆2397億円の経済効果が生まれるという東京都の試算も絵に描いた餅だ。

 子どもに「誰が悪いの」と聞かれたら答えに窮してしまうだろう。この際なので、「負のレガシー」を今後の糧として生かすため、親子で五輪施設を巡ってみてもいいかもしれない。

仮設席は誰にも座られず大会終了後に撤去

 すでに悪ふざけの人たちで観光地化している「オリンピックスタジアム」はもちろん、台場・有明地区には「お台場海浜公園」(トライアスロンなど)、「潮風公園」(ビーチバレーボール)、「青海アーバンスポーツパーク」(スポーツクライミングなど)、「有明テニスの森」(テニス)、「有明アーバンスポーツパーク」(自転車競技スケートボード)、「有明体操競技場」(体操など)、「有明アリーナ」(バレーボール)などの競技施設が半径2キロほどの範囲にひしめき合っている。

 記者がまず向かったのは、築地と勝どき・有明を結ぶ環状2号。オリンピックのために急ピッチで建設が進められた道路だが、「築地大橋」に入る手前で歩行者と自転車はシャットアウト。渋滞回避のため「車道」を規制するのはまだ分かるが、「歩道」まで封鎖する意味がまったく不明。無観客の時点で解除すべきだったが、封鎖された歩道を見ていると、いったん決めた施策は覆らないという日本人の「融通の利かなさ」、あるいは「前例踏襲主義」が分かってくるだろう。

 気を取り直して「ゆりかもめ」で向かったのは、有明アーバンスポーツパーク。高い位置にある「有明テニスの森駅」の構内からのぞくと、ブルーの仮設席がくっきり。この仮設席は誰にも座られずに、大会が終われば撤去される運命。これら仮設の観客席やプレハブテントなどはオーバーレイといって、札幌会場を除く43会場で約1000億円以上もかかってしまった。もう少し無観客の決断が早ければかなりのお金を節約できたが、ここから日本人の「決断力の弱さ」が学べるだろう。

「聖火台」に近寄ると注意される

 次にりんかい線「国際展示場駅」まで歩いていくと、有明と台場を東西でつなぐ約2キロの「オリンピックプロムナード」(通常名はセンタープロムナード)が近くにある。その真ん中ほどの「夢の大橋」に設置された聖火台は、わざわざ造ったのにフェンスで囲い、近寄らないよう警備中。予定していたライブパフォーマンスや飲食店も中止となった。

 台場の巨大ガンダムの近くに造った「ファンパーク」「ファンアリーナ」も一度も使われることなく解体される憂き目に。公式ライセンス商品の販売などが行われる予定だったが、五輪スポンサーは大きくアテが外れてしまった。

 オリンピックプロムナードは4連休中も人影はまばら。真夏にもかかわらず長袖、長ズボンで頑張ってくれている大阪府警や兵庫県警の警備の警察官の方が目立つくらいだ。ここから学べるのは、「無能な上司のツケは部下が支払う」だろうか? いずれにせよ、小学生がこの壮大なムダ遣いを見れば、「もう二度と東京にオリンピックは呼ばない」と思うに違いない。

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