SNS炎上社員への会社側の「正しい対処法と裁き方」 ホビー情報誌編集者は転売容認で退職に

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 自業自得か、やり過ぎか。ホビー情報誌「月刊ホビージャパン」の編集者がSNSに商品の転売容認発言を投稿して炎上したことから、会社は謝罪した上で、その社員を「退職処分」にしたと発表した。会社の判断は「当然」という意見が大勢だが、一部では「懲戒権の乱用では?」という声も上がるが……。

 ◇  ◇  ◇

「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られてるのが面白くないだけだよね? 頑張って買えばいいのでは? 頑張れなくて買えなかったんだから、頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは」

 問題の社員が上から目線で転売を容認する投稿を続けたのは23日。ツイッターのアカウントは「@itod110」で、ニックネームは「ぺ@HJ&HJEX」だった。その後も店舗運営の裏事情を数字を絡めて投稿し続け、「ん?? よくわかんない。転売して売れてるから、メーカーは潤ってるんじゃないの??」と最後まで上から目線だった(投稿は現在いずれも削除)。

 業界人とは思えない投稿で、ホビーファンの間で大炎上。「汗水垂らして働いてるサラリーマン全部敵に回してますよ」「本誌をもう二度と手に取る事はない」といった具合で総スカン状態。会社の頭文字の「HJ」が転売を意味する隠語になっていて、会社のイメージもガラガラと急落している。

 ホビージャパンは、フィギュアやプラモデル、ゲームの企画、開発、出版などを行う会社。「月刊ホビージャパン」は、その総合情報誌だ。どんな業界であれ、転売を容認する会社はない。それが社会の常識だが、この編集者は虫の居所が悪かったのか、転売容認投稿を続けたのだからどうかしている。

■処分は重すぎる?

 コトの重大さに気づいた会社は25日付でHPに謝罪文を掲載。26日付でその社員を「退職処分」にしたほか、常務ら3人の降格も発表した。事態の沈静化に必死だが、クビになった編集者の投稿は個人のアカウントで、私的な意見という見方もある。それが退職処分は重すぎるという人の根拠だが、どうなのか。働き方改革総研の新田龍代表に聞いた。

「当該社員がホビー商品の転売行為を容認する投稿は、会社の名誉や信用を毀損することになり、懲戒事由に該当する可能性が高い。担当役員以下管理職3人に引責処分が下されていることから考えると、取引先や関係者の反発が相当強く、会社は謝罪をしっかり示さなければ、業績へのダメージが計り知れず、信用回復は図れないと判断したのでしょう。そうだとすれば厳重処分案件、すなわち退職で、今回の処分は妥当と思われます」

 懲戒処分は軽い順に戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇(諭旨退職)、懲戒解雇となる。「退職処分」が何を指すのか分からないが、懲戒解雇か諭旨解雇、あるいは諭旨退職だろう。新田氏は「諭旨退職ではないか」とみる。

「懲戒処分の諭旨退職とは、当該社員に退職を勧告し、退職願を提出させて、自己都合退職扱いとする懲戒処分です。懲戒解雇だと、当該社員から後で不当解雇で訴えられるリスクがありますが、諭旨退職ならそのリスクが回避されます」

懲戒はイエローカードの累積で

 困ったことに、この手の問題社員はいなくならず、忘れたころに悪さをする。2011年には、アディダスの店舗スタッフが、来店したJリーガーと妻を侮辱する書き込みをしたり、ウェスティンホテル東京の飲食店アルバイトが芸能人などのプライベート情報を流したり。飲食チェーンのスタッフが不衛生な画像や動画を投稿するバイトテロも記憶に新しい。

 SNSでの発言は本来個人の自由だが、ルールがなければ危ない投稿や問題社員に対処できない。では、会社や上司はどうするか。まずは会社としてのルールづくりだ。

「会社が懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒規定を設け、社員がどんなことをしたら懲戒処分を受けるのかという懲戒事由を決めておくことが大前提。SNSに関する規定もしっかりと定めておくことです。それがないと、懲戒処分がそもそもできません」

 一般に戒告から懲戒解雇に至る懲戒処分の規定として、次のようなものがあるだろう。「職務上の指揮命令に従わず職場秩序を乱したとき」「素行不良で、会社内の秩序または風紀を乱したとき」「会社および会社の従業員、または取引先を誹謗中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは喧伝し、業務に支障を与えたとき」「会社および取引先の秘密およびその他の情報を漏らし、または漏らそうとしたとき」……など。

 これらに加えて、SNSに関する規定を設けるのだ。

「就業規則の第◎条(私的なインターネット上の情報発信)として、たとえば〈社員は、会社の信用を損なう情報を個人で利用する、ブログ、ソーシャルメディアサービスをはじめとするインターネット上のサービスで発信、開示してはならない〉というような規定を定めるのです。規定をどこまで具体的に定めるかによって、懲戒処分のレベルが変わってきます」

■警告書を査定に反映

 一般に「部長ムカつく」「Bがアホすぎる」など個人や会社が特定できないグチ投稿なら、懲戒処分にならないことが多い。しかし、顧客の個人情報を漏洩したり、第三者の名誉を毀損したりする内容は、会社の信用低下を招き、金銭的な損害を被ることもありうる。その社員は、場合によっては損害賠償責任や刑事責任を負い、当然、懲戒処分の対象になる。それが匿名のアカウントだと?

「問題の投稿によって名誉毀損や情報漏洩などの実害が発生していると、投稿者の身元が調査・特定されます。匿名アカウントでも、懲戒処分の対象です」

 悪い芽は、ひどくなる前に摘んでおきたい。そこで重要なのが、問題社員を管理する上司の対応だという。

「懲戒解雇された社員が裁判を起こすと、法廷ではその背景が厳しくチェックされます。しかし、戒告から降格までの段階は、会社の裁量がある程度認められるケースが多い。上司は問題行動を見つけたら、すぐに警告書や注意書といった形で文書で注意指導し、上司としては指導記録書として残しておくのがひとつ。記録書には、問題行動と周囲への悪影響を具体的に記入します。もうひとつは問題社員の始末書で、期日を区切って提出させ、反省と改善の意を表明させるのです。その記録を人事評価にひもづけるのが3つ目。『昇級や昇格の据え置き』、場合によっては、『降格/減給』という形に反映させるのです」

 炎上を起こしそうな問題社員からは、小さなイエローカードを集めておき、改善が見られなければ一段階ずつ処分を重くしていけばいい。累積でレッドカードが出されたときが、諭旨解雇(諭旨退職)、懲戒解雇になるという運用だ。

 それが基本だが、会社への損害が明らかなケースは、懲戒処分にこだわる必要はないという。

「社内外に著しい迷惑をかけ、会社や取引先への損害や重大な問題行動があれば、当該社員への法的措置を検討すればいいのです。具体的には、民事上の不法行為に基づく損害賠償請求や名誉毀損罪などでの刑事告訴を検討することになります」

 問題行動には、その都度イエローカード。これを肝に銘じておこう。

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