グレート義太夫さん 母親コヲちゃんの愛が詰まった「ベーコンレンチンもやし」
グレート義太夫さん(芸人・62歳)
たけし軍団の弁慶としてデブキャラで活躍、近年は糖尿病治療をしながら寄席芸人を続けてきたグレート義太夫さん。おふくろメシは子供の頃の好物ではなく、14年前から糖尿対策として作ってくれている、ベーコンレンチンもやし。そのオリジナルメニューには母コヲちゃんの愛が詰まっている。
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母親はコヲという珍しい名なので、僕は「コヲちゃん」と名前で呼んでいるんです。
コヲちゃんは弟夫婦と住んでいたけど、14年前いきなり僕の住む中野に越したいと言ってきたんですよ。僕のマンションがちょうど1室空いたのでそこに入りました。僕が4階でコヲちゃんが2階。
14年前から僕は透析治療のある月・水・金曜の病院帰りにコヲちゃんの部屋に寄ってご飯を食べるのがルーティンでした。
■中華風春雨のサラダが好きと話したら作ってくれて
給食に出てたもやしとハムとキュウリのバンサンスーという中華風春雨のサラダが好きだと話したら、三杯酢で作ってくれて。でも、こればかりだと飽きちゃうと思ったらしく、「こんなの作ってみた」と、同じ三杯酢でもっと手軽なベーコンレンチンもやしを出してくれた。メチャクチャおいしくて!
もやしは縮むのでひと袋の半分くらいを耐熱皿に入れ、スーパーで売ってる5~10センチくらいの長さのベーコンの薄切りを上に何枚かのせる。ベーコンでもやしを蓋する感じ。上にふんわりとラップをかけて600ワットで1分半か2分くらいレンジでチン。調味料は基本、三杯酢で醤油、お酢、みりん。それに塩ちょっとと砂糖も。それをかけるだけだから、所要時間5分程度。
コヲちゃんは「自分が発見した」とか言ってたけど、たぶんテレビで見たんだと思います。3分クッキングとか(笑い)。でも、料理上手でしたよ。子供の頃に好きだったのはナスの揚げ浸し。僕は野菜嫌いだったけど、油で揚げたナスの皮をむいて、みりんも入ったしょうが醤油に30分漬けたのは食べられたし、好きでした。
血糖値を測ったら630。それを告げたらコヲちゃんは泣いていた
うちは親父が糖尿病だったから、コヲちゃんはカロリーとかいろいろ勉強して、親父だけには見るからに薄味の別メニューを出していました。でも、親父は僕が35歳の時に亡くなりました。
そしてその翌年、僕が36歳で糖尿病が発覚。夏場に倒れて、病院で血糖値を測ったら630ってとんでもない数字。医者が「本当ならまともに会話できる状態じゃないですよ!」と驚いて。昏睡状態でもおかしくないと言われました。電話でコヲちゃんに告げたら、泣いてましたよ。
僕は不良患者で、医者の言うことを聞かず、一番怖い合併症は慢性腎不全までいってしまいました。それで、40代半ばすぎに母親が同じマンション内に越してきて週3回、僕に体にいい、考えたご飯を作ってくれるようになったんです。
■「ワンプレートじゃ寂しいだろ」とコヲちゃん
でも、日ごとに量が増えてきたんです。「ワンプレートでお願いします」と、僕が用意したワンプレートにしかのらない料理を作ってもらってたけど、ある時から他に小鉢が7つくらい出てくる(笑い)。「意味ないじゃん!」と僕が言うと、「ワンプレートじゃ寂しいだろ」とコヲちゃん。
ベーコンレンチンもやしはメインがもやしだからヘルシーです。ベーコンで行って来いかもしれないけど。本当にありがたいと思いながら、いつも食べてました。
そんな暮らしが約10年続いた4年前、コヲちゃんが熱中症で倒れてしまい、発見が遅くて後遺症が出て、今は施設に入っているんです。こういうご時世で会いにもいけず……。僕のブログに「コヲちゃん飯」というカテゴリーがあって、今まで作ってくれたご飯を載せてあります。早くまたベーコンレンチンもやしを作れる体調に戻ってほしい。
僕の体は可もなく不可だらけ。でも、血液検査に異常はないので、あすあさってにどうこうなることはないと思います。
事務所の先輩芸人たちは「いつ死んでもいいけど、夏場はやめて。暑い日に葬式したくない」とヒドいことを言ってます(笑い)。
(聞き手=松野大介)
▽本名=鈴木正之 1958年12月、東京都出身。たけし軍団のメンバーとしてグレート義太夫の芸名でテレビ等で活躍。近年はボーイズ・バラエティー協会の芸人として浅草・東洋館で漫談を行う。著書に「糖尿だよ、おっ母さん!」(幻冬舎)。