ブースター接種の効果とタイミング 抗体量が減ってきたら打てばいいのか?

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 感染症には麻疹や水ぼうそうのように一度かかると「一生もの」の免疫ができるものもあれば、インフルエンザのように繰り返しかかるものもある。新型コロナウイルスはどうやら後者のようで、感染予防効果を高めるためにワクチンを2回接種した人のブースターショット(追加の接種)が検討されている。これって効果はあるの?

■抗体価は3カ月で4分の1に減少

 米ブラウン大学などの研究によると、ファイザー製ワクチンの2回接種済みの人の抗体価が6カ月後に平均8割以上も弱まることが分かった。

 調査は介護施設居住者(平均76歳)と医療従事者(同48歳)の計212人を調べたもので、2回接種完了から2週間後の抗体価に比べ、6カ月後は約84%も減っていた。ファイザー製と同じmRNAワクチンであるモデルナ製ワクチンも、6カ月後までに徐々に抗体価が減少していくことが報告されている。

 国内での調査でも似たような結果が出ている。藤田医科大学が教職員209人を対象にファイザー製ワクチンの抗体価を調べたところ、2回目接種のピークに比べ3カ月後の抗体価は約4分の1の平均26.8%に減っていた。年齢が若い人ほど3カ月後も数値が高く、また男性より女性の方が高い傾向があったが、抗体価そのものは3カ月後に大幅に減っていた。この日米の両方の調査からも明らかなように、人種に関係なく時間の経過と共にワクチンの効果が減弱する可能性はある。

■インフルワクチンの有効期限は5カ月

 mRNAワクチンとは違うが、他のワクチンも「一生もの」でないものはある。例えば、狂犬病ワクチンの有効期間は2年、日本脳炎が5年、三種混合(Tdap)も10年とされる。最も代表的なインフルエンザのHAワクチン(A型H1N1、A型H3N2、B型の3株混合)も、接種から3カ月後の有効率は78.8%、5カ月後には50.8%へと減少する(メーカー発表値)。

 平均で3カ月は効果を持続するが、これには個人差もあって、基礎免疫を持っている場合は3カ月を過ぎても効果を維持できる半面、免疫のない場合は効果の持続期間が2カ月ほどに短縮されるという。

 新型コロナにおいても2回接種済みの人のブレークスルー感染が起きている。新型コロナ用のワクチンが一生もの、あるいは長期間の有効性を示すものではないことが分かる。そういうわけで、海外ではブースター接種を行う国も出ている。イスラエルは8月1日から60歳以上を対象に3回目接種を開始。現在は接種対象者を12歳以上に拡大している。米国もがん治療などで免疫力が弱まっている人への3回目接種を始め、9月20日からは対象を18歳以上に。

欧州は「全員には必要ない」と慎重

 その一方、イギリスやEU諸国は「全員には必要ない」と3回目に慎重だ。ドイツのブースター接種の対象は介護施設入居者と免疫不全患者などに限定。フランスは65歳以上と基礎疾患がある人で、かつ2回目接種から6カ月が過ぎなくてはいけない。イギリスは免疫不全患者など最大50万人としている。同じアジア圏ではシンガポールが免疫不全の人と介護施設入居者など。インドネシアは医療従事者に限っている。

 各国が3回目接種に慎重な姿勢を見せているのは、発展途上国への公平供給という意味合いもあるが、ワクチンの効果が弱まる理由が「時間経過」なのか、「変異株」の影響なのか、それとも「その両方」なのか判断がつかないため。ファイザーとモデルナはアルファ株(イギリス株)には絶大な効果を発揮するが、現在、猛威を振るっているデルタ株(インド株)、また別の変異株にどこまで効果があるかは分かっていない。

 いずれにせよ、免疫力には個人差がある。であるならば、年齢や性別で3回目接種の対象を決めるのではなく、「抗体価の量」で打つか、打たないかを決められないだろうか? 抗体定量検査を行ってくれるクリニックは街中に増えており、料金も1回1万円前後くらいまで下がった。検査をして「自分の抗体価は4分の1以下に減ったから3回目接種を希望します」というやり方もあっていいのではないか。

「ところが、ワクチンはそう単純なものではありません。抗体価とワクチンの有効性は必ずしも一致しませんので、抗体定量検査そのものにあまり意味はないのです」(医学博士の中原英臣氏=ウイルス学)

 素人的な考えでは、抗体価が高い人ほど感染しにくく、低い人ほど感染しやすいと考えがちだが、抗体価が低いから感染を防げないわけではない。ワクチンの有効性についても、接種後2カ月以内のピークには96%だったが、6カ月後も84%の高い有効性を維持していた。つまり、抗体価が8割減ってしまっても、2割あれば十分。ヒトの体はウイルスに暴露すると、抗体がすぐに増加するようにできている。

「結論を言いますと、3回目、4回目を打ったとしても感染を100%防ぎ切ることはできません。一律のブースター接種は必要ありません」(中原氏)

 それより変異株に対応したワクチン開発の方が大事だろうし、さらに言えば、インフルエンザで言うところのタミフルやリレンザ、イナビルといった特効薬の開発の方が重要。国の予算も3回目の接種にかけるより、特効薬に重点的にかけた方がいいというわけだ。抗体価が3カ月で4分の1に減ると報告した藤田医科大学の土井洋平教授も「一般に2回接種で重症化や死亡をかなり長い間、抑えられそうだと分かっている」とコメントしている。

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