日本経済を襲う「2024年問題」の深刻度…迫る“物流クライシス”に業界も消費者も戦々恐々
「物流は経済の血液」といわれるように物流は経済のインフラだ。しかし、荷物があるのに送れない状況も生まれつつあり、さらには迫りくる2024年問題への対応に現場は必死だ。他人事ではなく、私たちの暮らしにも大きく関わってくる問題だ。
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「関東で自宅療養者に食料品を配達してくれる業者知りませんか?」
7月初旬、大阪の自営業者は知人からそう相談された。日本全国で新型コロナ新規感染が急増。それに応じて自宅療養者も増えた。全国の自治体ではそのような自宅療養者に向け支援をしている。同居人や知人らからの買い物支援や食料調達支援が困難な人に向け、東京都では自宅療養サポートセンター(うちさぽ東京)が食料品配送などを実施。Webや電話で申し込んだ人に1週間分の食料品などが入った段ボール箱を配送していたが、急増に宅配が対応しきれなかった。そこで東京都は7月17日に続き25日にも受給者の要件を変更。「自宅療養者の6割に支給していましたが、本当に困難な方だけに条件を変更した。現在は対応できるようになったので安心してほしい」(東京都福祉保健局の担当者)と強調する。
■激減するドライバー
このように日本の物流はもはや危うい状況にある。ひとつはコロナ禍でネットショッピング(EC)がさらに普及し、宅配の物量や回数が増加したこと。運送業者の業界団体、公益社団法人全日本トラック協会は「ECの送料無料というキャンペーンの問題がある。送料は無料ではないのにあれで気軽に物を頼むようになり、ツケは運送業者に回っている」と強調する。
さらに深刻な背景は物流を支えるトラック運転手・ドライバーの減少だ。厚生労働省の「一般職業紹介状況」(2020年度)によれば、輸送・機械運転の職業の求人倍率は1.83倍、自動車運転の求人は2.12倍。00年には100万人いたドライバーは30年には50万人になる試算もある。
トラック業界は「2割長く2割安い」と言われる。全職業平均と比べ、労働時間が約2割長く、年間賃金が約1~2割低いからだ。少子高齢化に比例して若者の就労が減り、ドライバーの高齢化が業界を直撃。物流はすでに供給不足だといわれるが、30年には11.4億トンが運べなくなる需給ギャップ(35.9%の不足)が生じる見込みだ。
■追い打ちかける2024年問題
そんな運送業界がさらに戦々恐々としているのが「2024年問題」。「働き方改革」により24年4月から自動車の運転業務についても時間外労働時間の罰則付き上限規制が適用される。年間960時間(一般業務では720時間で自動車に関しては特例条項が適用)、月100時間未満、2~6カ月平均80時間に制限される。
いよいよ中小企業も、23年4月から月60時間超の時間外労働への割増賃金が25%から50%以上に引き上げられる。
国交省は「(2024年問題は)すべての経済活動に関わる問題」(自動車局貨物課)と指摘するなど、政府も危機感を募らせている。