著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

日立、富士通、三菱商事…企業内三田会「出世」「情報」「リクルート」驚異の威力

公開日: 更新日:

 日本最強の同窓会と目される慶応三田会。その強みは数多くの有力企業に深く根を下ろしていることだ。企業内三田会の会員数のトップ10は、日立の1800人を筆頭に東京海上日動、富士通、三菱商事、損保ジャパン、野村ホールディングス、トヨタ、三菱UFJ銀行、三井物産、三菱UFJ信託銀行と続く。うち9社の会員数は4桁に乗っている。

 注目は各社の現トップ。トヨタの豊田章男会長、野村ホールディングスの奥田健太郎社長、三井物産の堀健一社長、三菱UFJ信託銀行の長島巌社長と10社中4社が慶応大出身なのだ。「創業家の豊田章男さんは別として、三田会の力が大きく寄与していると思う」と話すのはその中核組織「連合三田会」の役員。出世を企業内の同窓たちが後押しするというのだ。

「同程度の能力を持つ2人が競っている場合、塾員(慶応大卒業生)のほうが選ばれる状況が生まれやすい」

 かつてメーカーの幹部だったこの役員は「上司に塾員がたくさんいるおかげで自分も引き上げられ、実力以上に昇進できた」と振り返る。「社内に勢力があれば、さまざまな面で有利に働く」と証言する三井物産OBはメリットとして情報が集まりやすい点を挙げる。

「三田会同士で会う機会も多く、社内の情報がよく入ってくる。たとえば、あの上司はどういうキャラクターだといった話も伝わってくるので、うまく立ち回ることができる」

 他社の三田会会員との交流もある。同業種の場合はあまり突っ込んだ情報交換はできないものの、「業界の全体の流れが把握できるのでお互いにプラスになる」という。

 企業内三田会の役割はもうひとつある。優秀な学生の確保、いわば就職あっせんである。「人事課も慶応出身を欲しがるし、来てくれれば三田会の強化にもなる」と話すのは地銀の三田会で役員を務める30代塾員。

「今もOBとして関わるゼミ三田会やサークル三田会の人脈を駆使して接触をして、塾生が2年生後半ぐらいになった時から関係をつくっておくんです。脈がありそうなら、エントリーシートの書き方から指導します」

 三田会の強みが発揮されるのは企業だけではない。昨年、慶応義塾高校が夏の甲子園で107年ぶりに優勝を果たしたのも三田会の存在が大きかった。決勝戦の五回表、慶応2死二、三塁の場面だった。丸田湊斗選手の左中間の打球を追った仙台育英の中堅手と左翼手が交錯。落球し、慶応の勝利を決定づける2点が入った。甲子園を地響きのように揺るがす慶応の大声援の中で選手同士の声がかき消され、エラーを誘発した。関西合同三田会が中心になって動員をかけ、応援でも相手を圧倒したのだった。「三田会の結束力のたまもの」と同関係者は感慨深げに語る。

 私立ナンバーワンのブランド力を支えるパワーの源は三田会にあるといっても過言ではない。

◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」(1540円)日刊現代から好評発売中!

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