能登半島地震から間もなく1年…「故郷に住み続ける」ということ、住民が口にした『あたわり』という言葉

公開日: 更新日:

先の地震は『あたわり』だと思っています

 珠洲市もまた、震災で甚大な被害を受けた。中心地は今も営業を休止する店が多く、夜になると町が静まり返り、どこか寂しい雰囲気が漂う。市役所近くの飯田町商店街にある本屋「いろは書店」の店主・八木久さん(83)は、地震で店舗が全壊するも、仮店舗で営業を続ける。

「正直、また大きな地震が来たら……という思いもあり、そういう点では気を抜くことができません。だけど、じゃあダメだというふうに思い込んでもダメだ」

 住民の楽しみを絶やさないためにと、タクシー会社の事務所を改装し、3月に営業を再開。八木さんは「一日一日を前向きに生きていけば、良い方向に行くと思ってやっています」と力強かった。

 帰り際、記者は八木さんにこう声をかけられた。

「この地域には『あたわり』という言葉があります。私も先の地震は『あたわり』だと思っています。よかったら後で意味を調べてみてください」

 検索してみると北陸地方に伝わる言葉で、「巡り合わせ」「宿命」という意味らしい。後日、馬道さんが電話でその意味を詳しく教えてくれた。

「『あたわり』というのは、言い換えるなら自分に向かってくる事実であり、天から与えられた運命。それは良いこともあれば、悪いこともある。人生は時々、大地震のようなことが起こりますが、それは自然との約束だから逃れられないもの。私も時々、生きていくことはなんて難しく、不安で怖いものかと思います。けれど、今襲ってくる困難を『あたわり』だと思い、それを受け入れ、前向きに努力していずれ立ち直っていこう。そんな思いで、書店の店主さんはおっしゃっていたのだと思います」

 困難にあっても諦めることはないし、だからといって力むこともない。そんな人生の“たたずみ”方を教えてもらうのであった。

(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  2. 2

    参政党トンデモ言説「行き過ぎた男女共同参画」はやはり非科学的 専業主婦は「むしろ少子化を加速させる」と識者バッサリ

  3. 3

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 4

    東京・荒川河川敷で天然ウナギがまさかの“爆釣”! 気になるそのお味は…?

  5. 5

    参政党さや候補のホストクラブ投票キャンペーンは、法律的に公選法違反になるのか

  1. 6

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  2. 7

    「イネカメムシ」大量発生のナゼ…絶滅寸前から一転、今年も増加傾向でコメの安定生産に黄信号

  3. 8

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 9

    コメどころに異変! 記録的猛暑&少雨で「令和の大凶作」シグナルが相次ぎ点灯

  5. 10

    「関東大震災」「阪神大震災」「東日本大震災」発生時のジンクスにネットがザワめく複雑理由

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」