高松市「庭園」「建築」「アート」「絶景」 瀬戸内の美に圧倒される旅

公開日: 更新日:

一歩一景の名園

 瀬戸内海の穏やかな気候に恵まれた高松市の魅力は、うどんだけではない。美しい自然やアートにも心を奪われる。ゴールデンウイークは3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」も開催中(春会期は4月18日〜5月25日)。見どころはいっぱいだ。

  ◇  ◇  ◇

 日本三名園といえば金沢市の「兼六園」、岡山市の「後楽園」、水戸市の「偕楽園」。いずれも江戸時代に整備された回遊式の大名庭園だ。その三名園に劣らない造形美を備えるのが「栗林公園」である。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、「わざわざ旅行する価値がある」として3つ星を獲得した名園だ。

 借景のような効果をもたらす紫雲山も庭園の一部で、総面積は23万坪と国の特別名勝に指定されている文化財庭園としては最も広い。園内には6つの池と13の築山、1400本の松があり、ぐるりと回るのだけで1時間半以上かかる。

「“一歩一景”と言われ、歩くごとに景色が変わるのも魅力です」(ボランティアガイドの明石豊重さん)

 松を生垣のように配した箱松は他の庭園では見られないもので、300年以上にわたり手入れされ続けてきた。

 富士山を模して造られた飛来峰から南湖を眺めると、絵画のように美しい風景が広がる。1日かけて散策しても飽きない場所だ。

高松市栗林町1−20−16
℡087・833・7411
https://ritsuringarden.com

丹下健三が手がけた戦後モダニズム建築

 1950(昭和25)年から6期24年にわたり県知事を務めた金子正則は、「文化もなければ人の真の幸せはない」と訴え、経済面だけでなく心の豊かさも追求した。戦後モダニズム建築を代表する文化遺産として知られる香川県庁舎の旧本館と旧東館は、金子が交流のあった芸術家・猪熊弦一郎に紹介された建築家・丹下健三が手がけたもの。全面ガラス張りの1階ロビーで圧倒的な存在感を示す陶板壁画「和敬清寂」は、その猪熊の作品である。

 金子は「民主主義時代にふさわしいもの」「観光香川にふさわしいもの」などの条件を示し、のちに「デザイン知事」の異名を取った。

「建築費は約5億円。90億円規模だった県予算の5%以上を投じたことになります。当時としては四国一高い建物で、屋上にはレストランも併設されていました」(文化財専門員・石田真弥さん)

 旧本館は日本で初めて中央に“背骨”をつくる「コア・システム」を採用。執務空間に柱はなく、間仕切りを使った自由な配置を可能している。

高松市番町4−1−10
℡087・831・1111
https://www.my-kagawa.jp/feature/higashikan/higashikan

「公務員建築士」が設計した重要文化財

 丹下健三の県庁舎建築に県庁職員として携わり、自らも屋島陸上競技場や県立武道館、農業試験場農林センター館の設計を手がけたのが山本忠司だ。瀬戸内海を見下ろす五色台にある「瀬戸内海歴史民族資料館」も山本の設計。正方形の展示室を地形に合わせて上下左右に配置したユニークな建物で、2024(令和6)年に重要文化財に指定されている。

「地形を生かしたつくりりのため、展示室は最大で7㍍の高低差があります。外壁には基礎工事の際に出た安山岩を積み上げています」(館長の松岡明子さん)

 館内には、瀬戸内海に接する11府県を対象にした資料が展示されている。

高松市亀水町1412−2
℡087・881・4707
https://www.pref.kagawa.lg.jp/kmuseum/setorekishi/

MOMAに飾られた「Red and Black」

「川島猛アートファクトリーミュージアム」は、2016年にニューヨークから地元・香川に活動の拠点を移した芸術家・川島猛さんのギャラリーだ。

 川島さんは1963(昭和38)年に33歳で渡米。キャンパスの中を格子で仕切り、枠の中に異なる有機的なフォルムを描いた「Red and Black」は、2年後にニューヨーク近代美術館(MOMA)で展示され話題になった。その1つは現在、同館の永久所蔵品になっている。

 53年に及ぶニューヨーク生活で数多くの作品を制作していた。代表作の1つ「ドリームランド」は、瀬戸内国際芸術祭(男木島会場)でも見られる。

 川島さんの作品は街中でも存在感を放つ。高松中央商店街のドーム広場は巨大なアート作品で、平和に暮らす人たちの様子がデザインされていて、歩道やベンチも作品だ。

高松市亀水町1411
℡087・802・6888
https://kawashima-af.com

高松市街と瀬戸内の島々の絶景

 源平合戦の屋島の戦いの舞台となった屋島。その山頂からは、高松市街や瀬戸内海の島々を一望できる。その絶景は、見事というほかない美しさ。

 四国霊場八十八ヶ所の84番札所の屋島寺、1周200メートルの回遊型施設「やしま〜る」も見どころだ。

休暇村「讃岐五色台」

 瀬戸内の絶景を独り占めできる「休暇村 讃岐五色台」が3月27日にリニューアルオープンした。新たに設けられた広さ400平方㍍のテラスから眺める瀬戸大橋と瀬戸内海の多島美は圧巻で、沈みゆく夕日とともに眺めていると、ささいな日常の出来事などすっかり忘れてしまう。圧巻の絶景だ。穏やかで美しい瀬戸内の風景は、新しくなった露天風呂や内湯、客室からも見ることができる。

 夕食は「香川のうまいもの」をコンセプトにしたビュッフェスタイル。サワラやタイの刺身など、瀬戸内の海の幸が日替わりで並ぶ。ライブキッチンでは、地元ひまわり牛のローストビーフも用意されている。

坂出市大屋冨町3042
℡0877・47・0231
http://www.qkamura.or.jp/goshiki/

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    渋谷区と世田谷区がマイナ保険証と資格確認書の「2枚持ち」認める…自治体の謀反がいよいよ始まった

  2. 2

    大阪万博会場の孤島「夢洲」で水のトラブル続出の必然…トイレ故障も虫大量発生も原因は同じ

  3. 3

    森友文書の一部欠落で財務省が回答…公表された概要リストに「安倍昭恵」の名前

  4. 4

    早実初等部を凌駕する慶応幼稚舎の人脈網…パワーカップルを惹きつけるもう一つの理由

  5. 5

    マイナ大混乱に自治体・医療機関から悲鳴続出! 殺到するカード更新、「資格情報のお知らせ」で誤解受診も

  1. 6

    『続・続・最後から二番目の恋』小泉今日子&中井貴一が羨ましい…“生存確認”できる異性の友達を求める女性心理

  2. 7

    埼玉・八潮市の道路陥没事故で3カ月以上も安否不明…被害男性はなぜ「実名報道」されなかった?

  3. 8

    「腕は落とさず、血圧落とす」建設業界で囁かれる…笑えない令和の“上下関係”

  4. 9

    話題の"ドバイ案件"元アテンダーが語る"採用1%"「気に入られたら帰国できない」パーティーの実態

  5. 10

    (1)静かに顕在化する「不登校離職」の現実…子どものケアと仕事の両立が困難に

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人のW懸案「ポスト岡本和真&坂本勇人」を一気に解決する2つの原石 ともにパワーは超メジャー級

  2. 2

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

  3. 3

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  4. 4

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  5. 5

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  1. 6

    だから高市早苗は嫌われる…石破自民に「減税しないのはアホ」と皮肉批判で“後ろから撃つ女”の本領発揮

  2. 7

    中居正広氏vsフジテレビは法廷闘争で当事者が対峙の可能性も…紀藤正樹弁護士に聞いた

  3. 8

    ユニクロ女子陸上競技部の要職に就任 青学大・原晋監督が日刊ゲンダイに語った「野望」

  4. 9

    吉岡里帆&小芝風花の電撃移籍で様変わりした芸能プロ事情…若手女優を引きつける“お金”以外の魅力

  5. 10

    佐々木朗希が患う「インピンジメント症候群」とは? 専門家は手術の可能性にまで言及